羽生九段新記録、令和の時代も活躍に期待


 将棋の羽生善治九段が、通算勝数を1434勝に伸ばし、故大山康晴十五世名人の記録を27年ぶりに更新して歴代単独1位を達成した。

 これまでも数々の記録を残してきた羽生九段が、またもや偉大な記録を打ち立てたことをたたえたい。

通算勝数で単独1位

 羽生九段は第60期王位戦挑戦者決定リーグ白組プレーオフで永瀬拓矢叡王と対戦。永瀬叡王は若手の成長株で、これまでの対戦成績は3勝7敗と羽生九段も苦手にしていた。だが新記録達成の一局は、羽生九段が永瀬叡王の攻めをしのぎ、終盤着実にリードを広げて勝利した。

 羽生九段は昭和60年、史上3人目の中学生プロ棋士としてデビューした。大山名人が50年以上かけて作った1433勝という記録を、羽生九段は30年余りで更新したことになる。もちろん大山名人の時代は現在と比べて棋戦の数が少なかったという背景はあるが、それでも羽生九段の記録が偉大なものであることに変わりはない。

 これまでも「羽生マジック」と呼ばれる絶妙な一手で白星を積み重ね、将棋界の歴史に残る記録を打ち立ててきた。その一つは、何と言っても平成8年に達成した史上初の7大タイトル(当時)の同時制覇だ。一つ取ることも大変なタイトルを七つ同時に獲得したのだから驚異的である。平成29年には前人未到の永世7冠の資格を獲得し、昨年は将棋棋士として初めて国民栄誉賞を受賞した。

 最初にタイトルを獲得したのは平成元年。平成の将棋界に王者として君臨し、数々の名局を残してきた。特に「光速の寄せ」と言われ、終盤に圧倒的な力を発揮する谷川浩司九段とは、多くのタイトル戦で対戦し、平成の名勝負を繰り広げた。

 しかし、平成30年の竜王戦でタイトル防衛に失敗し、27年ぶりに無冠となった。年齢による衰えを指摘する声もあるが、令和時代においても羽生九段の活躍を待ち望む将棋ファンは多いはずだ。

 将棋をめぐっては、史上最年少の14歳2カ月でプロデビューを果たし、歴代最多連勝記録の29連勝を成し遂げた藤井聡太七段らの活躍で人気は高まっている。先を読む力や集中力が付くため、子供に将棋を習わせたいという保護者も増えている。

 一方、トップ棋士をもしのぐ実力を備えた人工知能(AI)が登場し、AIとの共存も課題となっている。羽生九段は「いまAIがやっていることというのは、確率的に前より良くしていくということであって、絶対的に正しいものではない」と述べている。独特の勝負術で勝ち続けてきた羽生九段ならではの言葉だろう。

タイトル100期を

 羽生九段の通算タイトル獲得数は歴代1位の99期で、一日も早い100期の大台達成が期待される。

 今回の勝利で、羽生九段はあと1勝すれば王位戦で挑戦者となる。現在の王位は豊島将之3冠(名人・王位・棋聖)だ。平成2年生まれの豊島3冠が誕生した時、羽生九段はすでにタイトル保持者だった。令和の時代も記録に挑み続けてほしい。