中高年引きこもり、社会の課題として支援を


 衝撃的な数字である。内閣府の調査で、中高年の引きこもりが推計約61万人に上ることが分かった。

 若者層を対象とした既存の調査と合わせると、全体では100万人を超えることになる。

 深刻な「8050」問題

 当事者の高年齢化と引きこもりの長期化で、80代の親が50代の子の面倒を見る、いわゆる「8050」問題の深刻な現状が指摘されていたが、それが改めて裏付けられた形だ。個人や家庭だけの問題として済ませるべきでない。社会全体の課題として、相談窓口の整備、居場所づくりなど、幅の広い支援活動の強化に早急に取り組むことが必要である。

 厚生労働省は引きこもりを「仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6カ月以上にわたって自宅にとどまり続けている状態」と定義している。こうした人が増えて社会問題となり、支援が行われるようになったのは20年ほど前からだ。

 内閣府は、これまでに2010年と15年の2度、調査を行っているが、対象は15~39歳に限定された。不登校や就職活動の失敗、そして人間関係のつまずきがきっかけとなって始まることが多いことから、引きこもりは若者の問題と捉えられていたのだ。

 その時の結果はそれぞれ70万人、54万人だった。単純計算だが、40歳以上と合わせると、引きこもりは115万人に達することになる。実態はさらに深刻で「150万人以上」とする専門家もいる。

 今回初めて40~64歳を対象に調査を行ったのは、引きこもりの長期化で8050問題が深刻化してきたからだが、調査ではっきりしたことがある。引きこもりが始まった時期が40代で21%、50代でも19%もあったことから、決して若者だけの問題でなくなっていることが浮き彫りとなった。きっかけも「退職」が最も多かった。長期化も際立っており、「7年以上」が半数近くを占め、「30年以上」も6・5%いた。

 誰が生計を立てているかの質問では、自分が3割で、父母が34%、配偶者17%だった。親が健在なうちは、何とか支えることができても、親亡き後の生活困窮は目に見えている。

 約半数が「関係機関に相談したい」と回答したが、個人や家庭の問題としてしまえば、当事者たちは自責の念から相談できず、孤独感を抱えて苦悩するしかない。それでは解決に向かわない。

 40歳未満を対象にした調査で5年間で16万人減少したのは、スクールカウンセラーの設置などの支援策の効果と政府は見ているが、今はそれだけでは実情に合わない。相談体制の確立や就労支援など自立に向けた多様な支援が不可欠となっている。

 居場所づくりが重要

 中でも重要なのは、当事者の居場所づくり。人とつながることがプレッシャーとなるのではなく、穏やかな雰囲気の中で、心がゆっくりとほどけることが自立に向けた第一歩となるからだ。行政、地域、NPOが連携して取り組むことが求められている。