中国とアフリカ、憂慮される露骨な囲い込み
中国の習近平国家主席と30カ国以上のアフリカ諸国の大統領や首相らが一堂に会する「中国アフリカ協力フォーラム」首脳会合が北京で開幕した。
開幕式で演説した習氏は、アフリカとの「運命共同体」を構築し、アフリカの経済発展のため総額600億㌦(約6兆6000億円)規模を拠出すると表明した。
「新植民地主義」に警戒も
中国はシルクロード経済圏構想「一帯一路」に沿ったインフラ整備や経済援助をてこに、アフリカ諸国を影響下に置く「囲い込み」を進めている。資源確保や国連などでの影響力拡大を目指しているのだろう。
ただ一帯一路に関しては、大規模投資や多額の借款で相手国を債務の支払い不能状態に追い込み、港湾などを軍事基地として永年借用する狙いがあるとされる。
スリランカは昨年7月、債務の返済に窮し、中国の援助で建設した南部ハンバントタ港を中国国有企業に99年間譲渡することで合意。中国が開発を進めるパキスタンのグワダル港をめぐっても、中国に大幅な譲歩を迫られるのではないかと憂慮されている。
同じことがアフリカで起きないという保証はない。しかも、こうしたインフラ支援に従事するのは中国人労働者で、現地の雇用にはつながっていない。西側諸国が中国のアフリカ外交を「新植民地主義」と警戒するのはうなずける。
一方、マレーシアでは中国と共同で進めていた高速鉄道事業を、マハティール首相が巨額な建設費や債務を問題視して中止するなど、一帯一路にはほころびも見られる。露骨な覇権拡大の動きが反発を招くのは当然だろう。
中国がアフリカ諸国への支援を強化するのは、中国本土と台湾を不可分とする「一つの中国」原則を認めない台湾の蔡英文政権を国際的に孤立させる狙いもある。2016年の蔡政権発足以降、アフリカではサントメ・プリンシペとブルキナファソが台湾と断交し、中国と国交を結んだ。
アフリカで現在、台湾と外交関係を維持しているのはエスワティニ(旧スワジランド)のみだ。習氏は中台統一に強い意欲を示しているが、外交攻勢によって台湾への圧力を強めることは地域の不安定化につながりかねない。
日本はアフリカ開発会議(TICAD)を3年に1回、開催している。16年8月にケニアの首都ナイロビで開かれた前回会議では、安倍晋三首相が官民合わせて300億㌦規模の投資を実施すると表明した。日本の技術を生かした質の高いインフラ整備のほか、経済成長につながる事業への融資や民主的な社会の在り方などを示すことで、アフリカでの存在感を高めていく必要がある。
米国は関与を強めよ
こうした中、気になるのは米国のアフリカへの関心が低下していることだ。このことが中国の影響力を強める結果となっている。
中国の露骨な囲い込みは放置できない。米国はアフリカへの関与を強めるべきだ。