アジア大会閉幕、「五輪精神」で体制立て直しを
インドネシア・ジャカルタで開かれていたアジア競技大会が閉幕した。日本が獲得した金メダル数は40年ぶりに70個台の大台に乗り、連日、メダルラッシュに沸いた。
その一方でバスケットボール男子選手の買春行為が発覚し、大会期間中に日本体操協会のパワハラ問題も起こるなどスポーツ界の課題が改めて浮き彫りとなった。2020年東京五輪・パラリンピックに向けて「五輪精神」をいま一度想起し、体制立て直しの契機にしたい。
不祥事続きのスポーツ界
アジア大会は競泳女子の池江璃花子選手が6冠を達成し、陸上男子400㍍リレーでは20年ぶりに優勝。柔道では東京五輪でも採用される新種目の混合団体で初代王者に輝いた。スケートボードでは10代の4選手がメダルを獲得するなど若手の活躍が光った。
アジア大会は選手村での生活や華やかな開会式など五輪と共通した雰囲気がある。東京五輪へ飛躍の大会となったのは喜ばしいことだ。
だが、スポーツ界は不祥事続きだ。1月にカヌーの男子選手によるライバルへの禁止薬物混入、3月に日本レスリング協会のパワハラ問題が発覚。5月には日本大のアメフット悪質タックル問題、7月には日本ボクシング連盟の助成金流用発覚、そして体操女子の宮川紗江選手のパワハラ告発などが続出した。
女子レスリングが今大会で金メダルがゼロに終わったのは、パワハラ不祥事が原因の一つだろう。このままでは選手ばかりか、国民のスポーツへの思いが踏みにじられる。競技団体は東京五輪に向けて体制立て直しを急ぐべきだ。
これを機に「近代五輪の父」ピエール・ド・クーベルタンが1896年の第1回大会を前に語った言葉を思い出したい。
「健全な民主主義、平和を愛する賢明な国際主義が新しいスタジアムを包み、無私と名誉の精神をその場に育む。そうした精神に助けられ、選手たちは肉体を鍛える務めを果たすのみならず、道徳教育、社会平和の促進にも一役買うことができる。……やがては憎悪を生み誤解を生む無知、野蛮な道程を経て冷酷無比な争いに至る無知から解放されるだろう」(ギリシャ・アテネのパルナッソス文芸クラブでの講演)。
クーベルタンが五輪について思い描いたのは「スポーツの祭典」だけでなく、民主主義と道徳心、そして国際平和の実現だった。その意味で五輪は選手だけのものではなく、国民、万民が共に参加して初めて価値を発揮する。
東京五輪では全国の約11万人がボランティアとして運営のサポートや競技会場案内などを行う。その募集説明会が都内で初めて開かれたが、人数が集まるのか危惧されている。
「参加することに意義がある」との五輪精神をここでも肝に銘じたい。
国民一丸となれる環境を
東京五輪をめぐっては、猛暑や渋滞対策など課題が多く残されている。スポーツ界だけでなく、国民が一丸となって五輪精神を発揮できる環境を整えていくべきだ。