日大反則問題、ルール至上の大学スポーツを


 日本大-関西学院大のアメリカンフットボール定期戦で日大選手が関学大選手を悪質なタックルで負傷させ、被害届を受けた警視庁が捜査に入った。

 日大選手は謝罪の記者会見を開き、監督やコーチからの「潰(つぶ)せ」という指示でけがを負わせるため反則をしたと明らかにした。これに対し、試合当時監督の内田正人氏らは反則の指示ではないと釈明した。一連の事態はスポーツマン精神から程遠い。ルール尊重の指導を徹底すべきである。

選手は「監督らが指示」

 危険なタックルで関学大のQB(クオーターバック)に全治3週間のけがをさせた日大の宮川泰介選手は、22日に記者会見を行った。「私の独断ではない」として、内田氏や井上奨コーチから受けた指示で反則行為をした経緯を克明に陳述書に示してもいる。

 闘志が足りないとの理由で練習を外され、アメフットの大学世界選手権日本代表も辞退するよう内田氏から言われている。コーチの井上氏を通じて「相手のQBを1プレー目で潰せば出してやる」という内田氏の言葉を伝えられ、また「相手のQBがけがをして秋の試合に出られなかったらこっちの得だろう」などと念を押された。試合当日に内田氏に「QBを潰しに行く」と申し出ると「やらなきゃ意味ないよ」と言われたという。

 「潰せ」の指示を「相手を潰すくらいの強い気持ちでやってこいという意味」ではなく、本当にけがをさせなければならないと受け止め、追い詰められて悩み、アメフットを好きでなくなった宮川選手も被害者だ。

 監督を頂点にコーチら指導陣と末端の選手たちというヒエラルキーの中で、選手たちに反則までさせる強制力が隠然と機能する実態を陳述書は示している。アメフットのような組織化されたスポーツの試合で作戦を遂行するには、監督以下の指揮系統のヒエラルキーはあって当然だが、反則も作戦に含める指示は容認できるものではない。

 だからこそ、内田氏らは反則を指示していないと否定したのだ。しかし、それは表向きの発言ではないのか。井上氏はけがをさせるように言っていないとし、記憶にもないと述べた。負傷した関学大選手の親も記者会見をして警察に被害届を出したと公表しており、警視庁が傷害容疑で捜査に入ったことも否定した理由だろう。

 試合があったのは6日だ。もとより選手は学生であり、監督・コーチら指導陣は大学の教育者である。にもかかわらず、学生より教育者の謝罪が遅れた。猛省を促したい。

 関学大の抗議に、日大は「指導と選手の受け取り方の乖離(かいり)」と主張したが、一事が万事と言えまいか。

 フェアプレーを期待

 大学スポーツも教育の一環であり、教育者としてあるべき指導はルール順守である。激しいスポーツではなおさらだ。ルール順守の指導が徹底されていれば「潰せ」も健全な防御の指示として捉えたはずである。

 手段を選ばず、隠蔽(いんぺい)や遺恨を伴う勝利至上主義はやめ、ルールを至上とするフェアプレーを期待したい。