防衛大綱見直し、敵基地攻撃能力を持つべきだ


 防衛政策の基本方針を示す「防衛大綱」の見直し作業が年明けから本格化する。安倍晋三首相は「従来の延長線上ではなく、国民を守るために真に必要な防衛力のあるべき姿を見定めていきたい」と述べている。当然の認識だ。

厳しさ増す安保環境

 北朝鮮は核・ミサイル技術を高め、中国は海洋進出を強めており、わが国の安全保障環境は厳しさを増している。国民を守るには何が必要か、タブーに縛られず大胆に見直すべきだ。

 防衛とは、外国による攻撃に対して国の安全を保持することをいう。外国がどんな考えを持ち、攻撃してくるのか、その意図と能力を推し量って脅威に備える。それが抑止力となり、有事には国民を守る。これが防衛の要諦だ。国内の論理だけでは防衛は成り立たない。

 従来の大綱がこうした課題に正面から向き合ってきたとは言い難い。初めて策定された1976年大綱は平和時の防衛力の限界を示す「基盤的防衛力」を唱え、「限定的かつ小規模な侵略」だけを想定した。

 この考えは冷戦後も維持され、必要以上に防衛費が抑えられた。その間、北朝鮮と中国は軍事増強にひた走り、北東アジアの安保環境を激変させた。

 それを踏まえ2013年の現大綱は「統合機動防衛力」を打ち出したが、北朝鮮有事やミサイル防衛、島嶼(とうしょ)防衛に課題を残した。15年の日米防衛協力の指針(新ガイドライン)は「切れ目のない対応」を目指し、16年には平和安全法制が施行された。

 だが、脅威はより一層、迫ってきた。新大綱は従来の「防衛タブー」に縛られず、国民生活を守る確固たる指針を示さねばならない。焦点の一つに離島防衛や対北抑止強化に向けた巡航ミサイルの保有問題がある。

 北朝鮮は日米の弾道ミサイル防衛(BMD)を破ろうと、移動式発射台や準備時間の短い固体燃料エンジンを使用した奇襲的な発射実験、複数のミサイルの同時着弾も行っている。より強固なBMD構築の必要性は言うまでもないが、1発でも撃ち漏らせば甚大な被害をもたらす。

 これを防ぐために敵基地攻撃能力を持つべきだ。近く導入するステルス戦闘機F35に全地球測位システム(GPS)で目標に誘導する巡航ミサイルなどを装備する必要がある。

 これには「専守防衛」に反するとの声があるが、的外れな批判だ。専守防衛には「他国領土の壊滅的破壊に用いられる兵器を所持せず」との指針があるが(1984年版防衛白書)、ミサイル発射台を攻撃するのは壊滅的破壊には当たらない。

 56年に鳩山一郎首相(当時)は「座して自滅を待つというのが憲法の趣旨ではない。誘導弾などの基地を攻撃することは法理的には自衛の範囲内であり可能」と答弁し、2003年の有事法制の国会審議や06年の北朝鮮のミサイル発射の際にも政府は同様の見解を示している。

シェルター整備も考慮を

 新大綱は敵基地攻撃能力をタブー視せず、堂々と保有に乗り出すべきだ。シェルター整備など国民保護を考慮することも欠かせない。国民が安心できる防衛力を明示してもらいたい。