リニア談合疑惑、徹底捜査で不正にメス入れよ
リニア中央新幹線の関連工事の入札をめぐり談合の疑いが強まったとして、東京地検特捜部と公正取引委員会は、独禁法違反(不当な取引制限)容疑で鹿島、清水建設、大成建設、大林組の4社を家宅捜索した。
徹底捜査で不正にメスを入れる必要がある。
大手ゼネコン4社を捜索
事業主体のJR東海などは2015年8月以降、計22件の工事を契約。うち15件を4社の共同企業体(JV)が占め、3~4件をほぼ均等に受注した。大林組の副社長らが15件全てについて受注調整を認めたという。
東京―大阪間(438㌔)を1時間余りで結ぶリニア中央新幹線は、27年に東京―名古屋間の先行開業を目指している。総事業費は9兆円に上り、このうち3兆円は金利面で優遇される国の財政投融資で賄われる国家的プロジェクトだ。
民間業者の取引とはいえ公共性が高く、談合によって工事価格が高止まりすれば、そのツケはリニアの利用者に回ることになる。4社間では、受注希望を伝え合う情報交換が日常的に行われていたとの証言もある。重大な背信行為だと言わざるを得ない。
リニア中央新幹線建設には、地表から最大1400㍍の地下を掘る南アルプストンネル工事(全長25㍍)や、地下約40㍍に造られる品川駅の新設工事などが必要だ。高い技術やノウハウを持つ大手ゼネコンの力は欠かせないが、不正が許されるわけではない。事件が広がりを見せたことで工期の遅れを懸念する声も上がっている。
「スーパーゼネコン」と呼ばれる業界最大手の4社は05年12月、談合決別宣言を行った。当時は談合を「必要悪」とする意見もあったが、宣言は談合企業への課徴金引き上げが盛り込まれた改正独禁法が06年1月に施行されるためだった。
しかし、今年9月には東京外郭環状道路(外環道)の工事4件をめぐって談合疑惑が指摘され、発注元の東日本、中日本高速道路両社が「公正性を確保できない恐れが生じた」として契約手続きを中止した。そして、今回の疑惑の発覚で決別宣言は形骸化しつつある。建設業界には自浄能力が欠けていると言われても仕方があるまい。
JR東海側の情報公開不足が不正の温床となったとの指摘もある。官公庁の一般競争入札では、発注側が落札の上限となる予定価格などを設定し、事前や事後に公表している。入札額が予定価格に迫ると高い落札率となって談合などが疑われるため、不正を牽制(けんせい)する機能を果たしている。
一方、リニア中央新幹線工事の「競争見積方式」では評価項目の詳細は公表されず、JR東海は契約締結後も選定に至る経緯を明らかにしていない。契約額も「今後の契約に影響がある」との理由で非公表の姿勢を貫いている。
情報公開で公正性確保を
JR東海の担当者が工事費用に関する情報を大林組側に漏洩(ろうえい)した疑いも浮上している。JR東海は、第三者がチェックできるように各社の入札額や落札率などの情報を公開し、公正性を確保する必要がある。