巡航ミサイル、国家の安全確保に不可欠だ


 防衛省が長射程の巡航ミサイル導入の意向を示しているが、一部で「憲法違反」「専守防衛に反する」などといった反対論が出ている。だが、攻撃力なき軍事力は侵略を抑止できないのみならず、同盟国である米国の支援がなければ侵略阻止もできない。このため、現状のように攻撃力が欠如している自衛隊では、混迷する冷戦後の国際社会で国家の安全は確保できない。

 攻撃力を欠く自衛隊

 小野寺五典防衛相は、自衛隊機に搭載する長距離巡航ミサイルの導入を正式表明した。日本を取り巻く安全保障環境の厳しさを踏まえたもので、北朝鮮の弾道ミサイル迎撃を担うイージス艦の防護や南西諸島の防衛が主な目的だ。

 わが国では安全保障をめぐって政策次元の問題を議論する際に、とかく「憲法」や「専守防衛」を持ち出す者が多い。法学上、一国の自衛権は「前憲法的概念」である。世界各国の憲法で「自衛権保有」の用語が無きに等しいのはこのためだ。

 一方、「専守防衛」なる“用語”はあっても“概念”――中身はない。55年体制下での国会対策上、社共両党などとの駆け引きで自民党政権が使用した言葉にすぎないからだ。国際社会での安全保障関連用語の中にも存在しない、日本でだけ通用する言葉なのだ。

 各種運動競技を念頭に置けば明白だが、防御力だけで攻撃力がないチームは必ず敗れる。国際社会の概念である自衛権を駆使する際の条件の一つに「比例性の原則」がある。つまり、自衛側は侵攻軍事力の烈度に対応することが許容されているのだ。それなのに、防御力だけで攻撃力を欠く自衛隊では、敗北は避けられない。

 現代は兵器の高性能化が進み、戦いの速度や破壊力は甚大になっている。歴史上、攻撃兵器と防御兵器はシーソーゲームのように性能を競い合ってきた。だが、見通し得る将来、攻撃兵器――攻撃側の優位の時代が続きそうだ。米国によるフセイン政権下のイラク打倒は容易だったが、守る側に代わった途端に反政府勢力の鎮圧に手を焼いたのはこのためだ。

 防御だけを念頭に置いても、侵攻軍が長射程の弾道ミサイルや巡航ミサイルを保有し、わが方の射程外から攻撃をしてきた場合、自衛隊は対応できない。諸外国のように中射程の弾道ミサイル、長射程の巡航ミサイルを保有することによって対応が容易になる。

 “盾”の役割さえ果たせぬ

 現在の政府・防衛当局の防衛政策は「“盾”は自衛隊が担うが、“矛”は同盟国である米国に依存する」というのが建前だ。しかし、現在の自衛隊は盾の役割さえも十分に果たせない状況下にある。政府が「日米安保体制の深化」を強調する背景には、防衛力についても米国に寄り掛からなければならない事情がある。

 左翼勢力は、口を開けば自民党政権の外交・安保政策を「対米追従」と非難する。独立国家として情けない状況をつくり出している責任の多くは、こうした状況を守ろうとする左翼勢力やこれに雷同する一部マスメディアにあると言わねばならない。