日米韓共同訓練、対北安保は連携が重要だ
日米韓3カ国は、日韓の周辺海域で北朝鮮による各種弾道ミサイル発射を念頭にミサイル探知・追跡訓練を実施した。同様の訓練は昨年6月に初めて行われ、今回で5回目。訓練を通じて近年高まる北朝鮮のミサイル脅威に万全な迎撃・防衛体制を整え、無謀な挑発を思いとどまらせなければならない。
各国イージス艦が参加
訓練には海上自衛隊から迎撃能力があるイージス艦「きりしま」が参加したのをはじめ、米軍から2隻、韓国軍から1隻のイージス艦が投入された。
コンピューター上で北朝鮮の弾道ミサイルに見立てた仮想の標的を各国のイージス艦が探知・追跡し、3カ国で情報を共有するシミュレーションが主な内容で、今回は迎撃訓練は含まれなかったという。
北朝鮮が弾道ミサイルを発射した時、射程内に置かれている日米韓3カ国にとって何より重要なのは迅速かつ正確な情報の把握と共有だ。万が一に備え、迎撃・防衛体制がしっかり機能するよう繰り返し確認しておく必要がある。
特に日本の場合、8月と9月に北朝鮮の中距離弾道ミサイルが北海道上空を通過したばかりだ。ここ1カ月以上、ミサイルが発射されていないとは言え、いつ、いかなる種類のミサイルが発射されるか予断を許さない。
先の衆院選で圧勝した自公連立与党は、北朝鮮の脅威を「国難」と位置付け、これを乗り切る対策の必要性を有権者に訴えた。安保政策を推進するには政権基盤が安定していることも重要だ。一部から「選挙用」と批判されたが、実際に北朝鮮の脅威はかつて経験したことのない段階に突入している。
共同訓練に先立ち3カ国の防衛相は東南アジア諸国連合(ASEAN)拡大国防相会議に出席するため訪れたフィリピンで会談し、北朝鮮への圧力をかけ続けていくことで一致した。対北安全保障をめぐる一連の3カ国連携の動きを支持したい。
来月にはトランプ米大統領が日本、韓国、中国、ベトナム、フィリピンのアジア5カ国を歴訪する。総選挙での与党圧勝を受け、安倍晋三首相はトランプ大統領との対北圧力路線をさらに強固なものにしていくだろう。
問題は韓国・文在寅政権が北朝鮮への人道支援を発表するなど融和路線に執着していることだ。日米から不信を買い、対北圧力の連携にひびが入る恐れがある。韓国内でもトランプ大統領が韓国の頭越しに日本と対北政策を推進するのではないかとの懸念も浮上している。
日米韓の連携が乱れれば北朝鮮が付け上がるだけでなく、密(ひそ)かに3カ国の離間を狙って韓半島への影響力を拡大させようとする中国を利することにもなりかねない。
日韓ACSAも締結を
日韓は北朝鮮情勢を踏まえ、来月で1年間の期限を迎える軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を自動延長させることで一致している。米国を介さず直接に軍事情報を融通し合えるメリットは日増しに増大している。今後は食料や弾薬などの相互提供に関する物品役務相互提供協定(ACSA)の締結まで進めてほしい。