海の日、恩恵守るため教育が重要だ

 きょうは「海の日」。海の恩恵と、海洋国家・日本を取り巻く現状や将来について考えてみたい。

 侵されつつある権益

 四方を海に囲まれた日本は、有史以来、海から多くの恩恵を受けてきた。身近なところでは、豊かな水産資源が日本人の命を養ってきた。また、釣りやダイビング、サーフィンなど海洋レジャーが楽しみと癒やしを提供している。

 海はさまざまな文化をわが国に運んだ。近代以降は重要な通商路となり、貿易立国・日本の繁栄の礎となってきた。さらに島国日本にとって、海は天然の要害であった。安全保障上の重要性は今も変わらない。

 しかし現在のわが国の海をめぐる状況は、恩恵を当然のものと考えることを許さない危機的なものとなっている。第一に考えなければならないのが、海洋環境の悪化とりわけ水産資源の枯渇である。乱獲によって太平洋クロマグロなど魚の資源量が減少の一途をたどっている。

 豊漁が続いたサンマも減少傾向にあり、中国や台湾など8カ国・地域にサンマの漁獲枠を設定することを提案したが、合意に至らなかった。資源回復には、国内で効果的な資源管理を行い、それをベースに対外交渉を進める以外にない。

 沖縄県・尖閣諸島周辺で中国公船の領海侵犯が頻発している。これを常態化させようという中国の意図は明白だ。また南シナ海での人工島造成や軍事基地化は、日本のシーレーン(海上交通路)を脅かすものだ。最近では、日本海のわが国排他的経済水域(EEZ)内の好漁場で無許可の北朝鮮籍とみられる漁船の違法操業が問題となっている。水産庁の漁業取締船が小銃を向けられる事案も起きた。

 このようにわが国の海洋権益が侵されつつある現状を正面から受け止め、日本の海を守り抜く方策を再構築する必要がある。守り手のない海は奪われていく、そういう時代になりつつあることを銘記すべきだ。

 美しく豊かで安全な海の恩恵を次世代に受け継がせることが、われわれの責任だ。そのためにも今求められているのが、海洋教育の充実である。年少のころから海への関心を高めさせることは、日本が海洋国家であることを自覚させるために重要であるばかりでなく、将来、海を舞台に活躍する人材を育成する鍵となる。

 船員や漁業者となる若い人が減っている。海の働き手を増やすには、やはり小さい時から、何らかの形で海や船、魚などに触れ親しむ機会を持たせることが大切だ。海洋教育の重要性に着目し、笹川平和財団などが学校における助成制度「海洋教育パイオニアスクールプログラム」を昨年からスタートさせている。こうした取り組みがさらに広がることを期待したい。

 広いEEZに豊かな資源

 初等中等教育では、地理の授業などで、わが国が世界第6位の面積のEEZを持つことを、地図で示してインプットすべきである。世界4大漁場の一つ、三陸沖の漁場など豊かな水産資源だけでなく、将来開発の可能性を持つ海底鉱物資源などについて教えることも意味がある。