文科省天下り、「身内意識優先」の体質改善を
文部科学省の組織的な天下りあっせん問題で、調査結果の最終報告が公表され、新たに判明した35件を加えて計62件の国家公務員法違反が確認された。
OBを含む幹部ら37人が停職や減給などの処分を受け、1月の処分対象者も合わせると43人に上る。極めて深刻な事態だ。
次官も違法行為に関与
文科省は、清水潔、山中伸一、前川喜平の事務次官OB3氏について、組織的な天下りに関わってきた「重大な責任」があるとして停職相当とした。官僚トップの事務次官による違法行為への関与は、この問題がいかに根深いかを示すものだ。
報告では職員の再就職について、人事課職員が同課長や事務次官に案を提示するなど「省内意見調整」があったと指摘。あっせんの仕組みが、省の組織的関与の中で運用されてきたと認定した。人事課OB嶋貫和男氏を仲介役としたあっせんにとどまらず、人事課を中心に職員が直接あっせんをした事例や、他府省の職員について大学への再就職をあっせんしていたケースも明らかになった。
2008年12月に施行された改正国家公務員法は、癒着や不正を防ぐため、省庁によるあっせんを禁じている。文科省職員は、改正法の趣旨をどのように捉えていたのか。これでは、天下り先の大学などに便宜を図ったのではないかと疑われても仕方があるまい。
文科行政への信頼が失墜した影響は大きい。大学入試センター試験に代わって20年度から導入される新テストの準備に支障を来す恐れもある。子供たちの教育に携わる責任の大きさを改めて自覚すべきだ。
報告は問題の背景として「現職職員がOBに対して情報提供を行うなど必要以上に気配りする組織風土」を挙げている。松野博一文科相は「順法意識より身内意識が優先されてしまった」と述べた。再発防止を徹底するには、こうした組織体質の改善が不可欠だ。
調査では、誰がどのようにしてあっせんの仕組みをつくったかは解明されなかった。こうした仕組みは少なくとも10年7月には存在したとしているが、当時の幹部や職員からの証言や明確な物証は得られないままだった。これでは、うみを出し切れたとは言えない。今後も調査を続ける必要があろう。
文科省は省内改革に向け、水落敏栄、義家弘介両副大臣の下、各局の課長で構成される検討チームを設けた。今回の問題の原因の一つとして、次官にならない職員が定年前に早期退職する慣行の存在が指摘されている。硬直化した人事の仕組みの見直しも求められる。
改正国家公務員法の施行に伴い、政府は再就職を一元的に仲介するために「官民人材交流センター」を設けた。だが、あっせんの対象は早期退職者に限られ、15年度までにセンターを利用して再就職したのは6省庁の48人にとどまっている。センターの機能向上も課題だ。
OB活用の環境整備を
優秀な官僚OBを活用することは社会全体の利益にもなる。彼らがさまざまな分野で能力を発揮するための環境整備は欠かせない。