軍事研究、国家の平和維持に必要だ


 日本学術会議は、大学などの研究機関が軍事目的の技術研究を行うことの是非について議論を行っているが、反対論が強いという。

 「学者の国会」と言われる学術会議が、依然として軍事アレルギーが強いようでは、世界の技術開発競争に後れを取ってしまいかねない。

反対論が強い学術界

 学術会議は昭和25年、42年に戦争目的の研究を禁止する声明を出している。声明に法的な強制力はないものの、軍事研究に取り組む科学技術系の学者は白眼視されたり、時には村八分的な扱いを受けたりしてきた。

 防衛省は2年前、科学技術の基礎研究に資金を提供する「安全保障技術研究推進制度」を発足させた。しかし、学術会議の禁止声明がネックとなり、応募者は極めて少ない。このため、学術会議の一部の会員による要請もあって、昨年から軍事研究の是非について検討を開始している。

 軍事研究反対論者は「敗戦後の日本は、平和産業だけで世界有数の経済大国になった」ことを理由として挙げる。だが、戦争で疲弊した日本経済の立ち直りのきっかけは、韓国動乱の勃発だった。

 戦場近辺には、武器の補修・整備設備が不可欠なので、米国は日本の重工業絶滅を狙った占領政策を撤回し、日本の工業力を活用せざるを得なくなったのである。つまり、軍需産業が経済再建の原動力となったのだ。

 世界の主要国を見ると、民需と軍需を分けて考え、軍需品の開発を否定するような国家はない。現在、われわれが日常生活で多くの恩恵を受けている製品には、軍事上の必要性から開発されたものが少なくない。

 例えば、インターネットは、核戦争の際の通信を確保するために開発されたものだ。全地球測位システム(GPS)利用のナビゲーターは、核弾道ミサイル、巡航ミサイルの誘導装置の精度を落として民間で利用している。気象衛星も軍事上欠かせないために生まれたものだ。民間用旅客機も例外ではない。

 企業が民需製品を開発する場合、近い将来製品化できるものが中心になりがちである。これに対し、軍事技術は採算、成否を度外視して開発される場合が多い。

 わが国の産業は世界で最も多くのロボットを活用している。それにもかかわらず、東京電力の福島第1原発事故の際、この種の事故に対応するロボットがなかった。危険が極めて大きい場合に使用する軍事用ロボットの開発を怠ってきたのである。フランスの援助を得たのはこのためだ。

禁止声明は撤廃せよ

 わが国は従来、応用技術の開発が得意だったが、これからは基礎技術の開発が極めて重要になりつつある。これは採算面ではリスクが大きい。

 一方、国家の安全を確保できないで経済的な繁栄はあり得ない。平和を維持する最後の手段が軍事力であるという事実は、現代の国際社会でも変わっていない。民需技術と軍需技術を分け、技術者が後者のための研究を行うことを否定するような声明は撤廃すべきである。