准高齢者、活躍の場広げる取り組みを
日本老年学会などが、現代人は心身が若返っているとして、65歳以上とされる高齢者の定義を75歳以上に引き上げ、65~74歳は「准高齢者」と区分するよう求めた。
65歳以上で元気な人が増えたことは喜ばしい限りだ。こうした人たちの活躍の場を広げる取り組みを進めたい。
65~74歳が「若返り」
学会は、脳卒中や骨粗鬆(そしょう)症などの病気や運動のデータを解析した結果、現代人が10~20年前と比べて加齢に伴う衰えが5~10年遅く、「若返り」が見られると指摘。知能の検査では最も得点の高い世代が40代から50~60代に変化し、残った歯の数も同一年齢で比べると年々増える傾向にある。
こうしたことを踏まえ、学会は65~74歳を新たに「准高齢者」とし、就労やボランティア活動ができるよう後押しして「社会の支え手」として捉え直すべきだと提言。75~89歳を「高齢者」、90歳以上を「超高齢者」と呼ぶのが妥当としている。
確かに、65~74歳では活発に活動できる人が多い。各種の意識調査でも、65歳以上を高齢者とすることに否定的な意見が強くなっている。先進国の多くは半世紀以上前から高齢者を65歳以上としているが、医学的、生物学的に明確な根拠はないとされる。
昨年9月の総務省の推計によると、65歳以上は約3400万人で人口の約27%に上る。しかし高齢者を75歳以上とした場合は約13%となる。65~74歳が活躍すれば、日本社会の活性化につながろう。
だが「若返り」といっても、あくまでも全体的な傾向であって、65歳以上になると体力の個人差は広がる。高齢者の定義を見直すとしても、社会保障制度などを急激に変えることは非現実的だ。学会も今回の提言の中で「(年金制度などが)ネガティブな方向に動いてほしくない」としている。
日本では定年延長や継続雇用制度の導入が進んでいるとはいえ、厚生労働省の2015年の調査によれば、8割の企業が「60歳定年」となっている。65歳以上で元気だとしても、活躍の場が十分に整っているとは言えない。支え手になってもらうのであれば、こうした現状を改善する必要がある。
「74歳まで現役」という人が多くなれば、税収が増え、景気にも好影響を与えよう。社会保障の持続可能性も高まる。
15年の日本の平均寿命は83・7歳で、20年以上連続で首位となっている。元気で意欲のある高齢者が仕事やボランティアに励むことは、活力ある高齢化社会の在り方を世界に示すことにもつながろう。
「健康寿命」延ばしたい
一方、介護を受けずに日常生活を支障なく送れる期間を示す「健康寿命」が、13年には男性71・19歳、女性74・21歳で、いずれも平均寿命より10年前後短くなっている。平均寿命との差は「健康でない期間」を意味している。
元気な高齢者はもちろん、若い世代もバランスの取れた食生活や適度な運動などを実践し、少しでも健康寿命を延ばせるように心掛けたい。