新成人へ、不確実な時代こそ読書を
きょうは成人の日。総務省統計局の推計では、今年の新成人は123万人だ。昨年と比べると2万人の増加だが、総人口に占める割合は7年連続で1%を割り込むという。
断片的なネット情報
大きな変化の予感とともに、2017年が始まった。予測の難しい、不確実な時代に入ってきていることを多くの大人たちが感じている。いよいよこれから大人の仲間入りをする若者たちにとっては、将来への展望を開きにくい時代と映っているのではないだろうか。
新成人が、こうした世界と社会の変化の波を受けるのはまだ先のことかもしれない。しかしグローバル化が進む現代、比較的社会の安定した日本においても直接的・間接的な影響を免れることはできない。
将来は、そのような課題に直面し、解決を期待され、任される人もいるだろう。その時、自分の経験や家庭、学校で学んだことなどが役に立つことは間違いない。だが、よりスケールの大きく複雑な課題にぶつかった時、自分の経験だけに頼ることには限界があるかもしれない。
そこで勧めたいのは、質の高い読書をすることだ。新成人は、まさにスマートフォン世代と言っていいくらい、スマホを手放せない生活習慣を身に付けて育った世代だ。情報を得るのも、テレビ以外はインターネット交流サイト(SNS)やニュース配信アプリからが多いようだ。
しかし、これらの情報は時に正確さを欠き、断片的であることが多い。前後の関係を立体的に把握せず、情報だけが溢(あふ)れれば振り回されかねない。
これを防ぐには、新聞や優れた書物を読むことが最も適切である。これから世界が予測困難な時代に入ろうとする時、どのように問題を解決していくか。そこで本質的な理解と大局的な判断をするためには、思想や宗教、文学、歴史の知識をベースにした思考ができるかどうかが大きい。
「賢者は歴史に学ぶ」という。読書は学生時代のものとは限らない。むしろ社会人となってからよく読むようになる人も少なくない。
今や「世界のキタノ」と呼ばれる映画監督・お笑いタレントの北野武(ビートたけし)氏は、浅草の劇場でアルバイトをしながら、時間があれば読書をしていたという。
新成人へのあるアンケート調査では、日本の未来について「明るいと思う」は33%で「暗いと思う」が67%だった。日々のニュースだけ見聞きしていれば、こうした感想を持つようになるだろう。しかし、この国の歴史や文化を学び、その潜在力を知れば、悲観的な予想も減るのではないか。
すぐに役立つ情報よりも、本であれ、映画や音楽であれ、生き方や人間観、世界観などを豊かにするものに触れることが大切だ。それらは問題解決能力の基礎ともなる。
主体的で的確な対応を
不確実さを増す時代に、状況に振り回されるのではなく、主体的に的確に対応し、目的に向かって前進する。そんな自己確立を心掛け、夢をかなえるために歩んでもらいたい。