もんじゅ廃炉、核燃料サイクルの堅持を


 政府は日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の廃炉を正式に決定した。原発政策は正念場を迎えるが、引き続き使用済み核燃料の再利用を目指す核燃料サイクル政策の維持が肝要だ。

廃炉に3750億円

 もんじゅは1994年に初臨界を達成したが、95年にナトリウム漏れ事故を起こすなどトラブルが相次ぎ、運転は250日にとどまっていた。運転再開には新たに5400億円以上が必要で、政府は「得られる効果が経費を確実に上回るとは言えない」と判断した。

 ただ、廃炉には約30年で3750億円以上かかると試算されているほか、原子炉の冷却に使ったナトリウムや使用済みのウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の処理など、未解決の課題が残る。廃炉に向け、国民が納得し、信を得られる新たな体制を望みたい。

 一方、政府は将来の高速炉開発に必要だとして、原子力機構がナトリウムなどの取り扱いについて、もんじゅを活用した研究を実施する方針も示した。また、フランスが開発中の高速炉「ASTRID」に協力し、知見を得るという。

 現在の軽水炉による原子力エネルギーの利用は、資源的に見て石油と同程度の量しか期待できない上、核燃料サイクルについても完結したものとなり得ない。また高速炉サイクルが、軽水炉サイクルや直接処分コストに比べて優位性がある。

 しかも高速炉はプルトニウムの増殖だけではなく、寿命の長い放射性物質を燃料として用いたり、寿命の短い物質に変換することが可能であることも、分かっている。高速炉開発の研究を中断させてはならない。

 「もんじゅ」では、ナトリウム漏れ事故の後、開発の空白期間などが生じ、プロパー職員を増強できず、技術継承を行う体制がつくれていない。また多くの予算を使っていることで、外部からの厳しい批判にさらされ、受け身的で閉鎖的な体質になり、コンプライアンス意識が薄れていったこともある。反省点を今後に活(い)かしたい。

 高速炉は、高速の中性子を使って核分裂を促すものだが、「もんじゅ」はこれまで、世界的にも貴重な高速中性子の照射場として国際研究拠点としての期待も高かった。その成果をどう維持し、発展につなげるか。国際協力の強化は必須だ。

 また今後は、高レベル放射性廃棄物のさらなる減容化についての研究も並行して行われるべきだ。核変換によって使用済み燃料中の放射能減衰を早めることができるようになれば、直接処分では100万年もの時間がかかるものが、300年という時間の範囲内でサイクルの中に組み込むことができる。

開発におごりは禁物

 軽水炉に続き、高速増殖炉も成功するだろうというおごりが行政や研究者、そして国民の意識のうちにもあったことは否めない。今回の措置決定を奇貨として、研究・協力体制を広げることを願いたい。わが国は、エネルギー資源だけでなく環境論の立場からも、核燃料サイクルを中心とした原発政策の維持、発展が欠かせないのである。