出生100万人割れ、若者の未婚率下げる対策を
厚生労働省が近く発表する2016年の人口動態調査推計で出生数が100万人の大台を割り込む見通しとなった。
このままでは少子化が止まらず、将来の日本の国力全般に衰退をもたらす恐れがある。これまで以上に官民を挙げた対策を進める必要がある。
統計開始以来初めて
出生数の100万人割れは統計を開始した1899年以来初めてのことで、明治・大正・昭和の時代を通じて100年以上もなかったことだ。少子化に歯止めがかからない状況が改めて浮き彫りになった。
過去の時代と比べて明らかに変化したのは晩婚化が進んだことで、15年時点の平均初婚年齢は男性が31・1歳、女性が29・4歳となっている。背景には高学歴化、女性の社会進出、経済格差の広がりなどがあろう。
出生率は前年より0・03ポイント上回る1・45となっている。しかし、政府が目標として掲げる「希望出生率1・8」の達成には遠く及ばない。
出生数が減少しているのは出産適齢期の女性が減っているためだ。ただ、それだけでなく未婚率の上昇と密接な関連があることも見逃せない。20代~30代前半に結婚する男女を増やす以外に出生数増加の決め手はないだろう。
国勢調査によれば、年齢別の未婚率は、1980年に25~29歳男性が55・1%、同じく女性が24%、30~34歳男性が21・5%、同じく女性が9・1%だった。これが2010年には、25~29歳男性が71・8%、同じく女性が60・3%、30~34歳男性が47・3%、同じく女性が34・5%となっている。
政府は内閣府に少子化対策担当の閣僚ポストを07年から設けてきた。しかし、児童手当(子ども手当)をはじめとする子育て支援は、夫婦が子供をもう1人増やす傾向を強めたものの、未婚の若者に結婚を促す効果は不十分だったと言える。未婚者の多くは子育てへの関心が低いことも理由の一つだろう。
また少子化対策として、保育園の増設で待機児童の解消を目指す取り組みが来年度予算案でも拡充される。既婚者にとっては実益があるサービスであり、出生数増加につながり得るものの、未婚の若者の心には響かないのではないか。
内閣府の調査では20~30代の未婚で恋人のいない人の6割が「恋人が欲しい」と回答し、約7割が「結婚した方がよい」と考えている。しかし、55%が「出会いの場所がない」と答える実情がある。
核家族化が進み、地域や親戚との関係が希薄化し、長期不況の間に終身雇用制が崩れて企業の家族経営的社風も薄れた。縁談を持ちかけられない未婚者が増えていることがうかがえる。
すでに、自治体では婚活支援の情報提供などを進めている。こうした情報の発信強化に取り組み、交際のきっかけを提供するイベントや結婚相談などに、より多くの未婚者が参加できるようにする必要があるのではないか。
安倍内閣は成果挙げよ
「1億総活躍社会」を掲げる安倍内閣は、未婚率低下でぜひ成果を出してほしい。