調査捕鯨、引き続き理解得る努力を


 国際捕鯨委員会(IWC)総会がスロベニアで開かれ、反捕鯨国が日本の調査捕鯨の実施を遅らせることを狙って提出した決議が採択された。

反対国との溝深まる

 決議は反捕鯨陣営のオーストラリアとニュージーランドが共同で提出したもので、調査捕鯨に関してIWC科学委員会だけでなく総会の評価も加えるとしている。法的拘束力はなく、日本は今後も南極海での調査捕鯨を継続する方針だ。ただ、国際世論の厳しさが改めて浮き彫りとなったことは確かだ。

 IWCは1982年、クジラの生息数などに関するデータ不足を理由に、肉や油の販売が目的の商業捕鯨を一時停止すると決めた。調査捕鯨はクジラを食料資源として持続的に利用するためのデータ収集を目的に行われている。日本などの捕鯨支持国は商業捕鯨の再開を目指しているが、今回の総会でも反捕鯨国の理解は得られず、両者の溝は一段と深まった。

 南極海の調査捕鯨をめぐっては、国際司法裁判所が2014年3月に中止命令を出した。日本は捕獲をいったん停止した後、捕獲数を減らした計画をIWC科学委員会に提出し、15年末に再開している。ただ、一定数を捕獲しなければ正確なデータを得ることは難しいとも指摘されている。

 鯨肉は低脂肪でタンパク質や鉄分が豊富だ。ほかにも、ドコサヘキサエン酸(DHA)やドコサペンタエン酸(DPA)などが多く含まれている。世界人口の急増による食料不足の可能性に備える意味でも、調査捕鯨は重要だと言える。

 反捕鯨国はクジラを「特別な動物」と考え、感情的な主張を展開している。しかし、こうした価値観を他国に押し付け、捕鯨に反対するのはおかしい。たとえ自分たちとは異なる食文化であっても、尊重すべきではないのか。

 もっとも、反捕鯨が世界の潮流とも言えないだろう。IWCに加盟する88カ国のうち、反捕鯨国は49カ国、捕鯨支持国は39カ国だ。反捕鯨国の方が多数だが、捕鯨支持国も決して少なくはない。

 日本は調査捕鯨の必要性について、国際社会に粘り強く説明を続ける必要がある。捕鯨反対の意見の背景には、乱獲への懸念がある。だが、現在ではクジラの増加が他の漁業資源を圧迫しているとも言われる。

 総会では、日本の沿岸部などで行われている小型クジラ漁についても議論された。小型捕鯨を続ける和歌山県太地町では、今も世界各地の反捕鯨団体が抗議活動を続けている。

 三軒一高町長は、政府に対して「(捕鯨継続の)旗をしっかりと立て、オールジャパンで訴え続けないと日本の地域産業を守れない」と指摘。調査捕鯨の継続と商業捕鯨の再開を目指す立場を堅持するよう求めた。伝統文化でもあるクジラ漁を守り抜くことが求められる。

不毛な対立に終止符を

 そもそもIWCは、クジラ資源の保存や捕鯨産業の発展のために設けられた機関だ。加盟国は原点に立ち返り、捕鯨支持国と反捕鯨国の不毛な対立に終止符を打つ必要がある。