パリ協定発効、温暖化対策を加速させよ


 2020年以降の地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」が発効した。これを機に、対策を加速させたい。

日本の批准間に合わず

 パリ協定は、途上国を含む全ての国が温室効果ガスの削減に取り組み、世界全体で産業革命前からの平均気温の上昇を2度未満に抑えることを目指す。

 近年は気候変動に伴う異常気象が多発し、日本でも毎年のように大雨による土砂災害や河川の決壊などが起きている。平均気温上昇が2度を超えれば、全世界で農業や生態系の被害が大きくなるとみられる。

 さらに、南太平洋の島嶼国は海面上昇によって国土水没の危機に直面している。温暖化対策の強化は待ったなしだ。

 パリ協定は、温室ガスの2大排出国である米中など90カ国以上が批准を済ませ、採択から1年足らずで発効した。このこと自体は評価できる。しかし、各国の提出した削減目標では2度未満を実現できない。パリ協定では5年ごとの目標見直しが義務付けられているが、対策の加速が求められよう。

 特に世界1位の排出国である中国は、2030年ごろに二酸化炭素(CO2)の排出量のピークを迎えるという目標を掲げている。だが中国は全世界の温室ガスの5分の1を排出しており、温暖化対策に大きな責任を持つ立場だ。ピークの時期をもっと早めるべきではないのか。CO2以外の温室ガスの削減目標を定めていないことも問題だと言える。

 今月7日からはモロッコ・マラケシュで国連気候変動枠組み条約第22回締約国会議(COP22)が開かれる。温室ガス削減目標の達成状況を各国が互いに検証する仕組みなど、協定の実行に向けたルール作りが始まるが、いかに実効性を持たせるかが課題だ。

 一方、日本は協定発効までに批准手続きを終えることができなかった。協定のルールを決めるため、COP22に合わせて開かれる第1回パリ協定締約国会議(CMA1)には議決権のないオブザーバー参加となる。

 出遅れを取り戻すためにも、まずは早期に批准する必要がある。また日本の存在感を高めていくには、途上国への技術支援が不可欠だ。途上国の排出量を減らす「二国間クレジット制度(JCM)」の普及を進めたい。

 日本は、温室ガスを30年までに13年比で26%減らす目標を決定している。各企業はエコカーの普及促進やCO2の有効活用など、商機拡大もにらんだ取り組みを加速させている。温暖化対策と電力の安定供給を両立させるためにも、安全の確認された原発の再稼働を進めるべきだ。さらに、30年度に電源構成に占める原発比率を20~22%とする政府目標を見据えた政策が求められる。

適応策も着実に進めよ

 温暖化をめぐっては、抑制策とともに適応策を講じることが欠かせない。

 政府は昨年11月、被害の軽減策をまとめた「適応計画」を決定した。洪水対策としての堤防整備や高温に強いコメの品種改良、熱中症対策などを盛り込んだものだ。着実に進める必要がある。