中国船の侵入、国内外のスクラムで跳ね返せ
中国当局による沖縄県・尖閣諸島沖の領海侵犯が頻発している。5日以降、最大で海警局の公船十数隻、漁船約400隻が接続水域に現れ、公船数隻が毎日のように領海侵犯を繰り返している。
このような暴挙は断固として認めるわけにはいかない。わが国は毅然(きぜん)と領土領海を守り抜かなければならない。
尖閣沖の領海で頻発
中国は国際社会の関心がリオデジャネイロ五輪に向く時期に合わせて、再び尖閣諸島周辺で領海侵犯の攻勢に出てきた。国際批判をかわす狙いだろう。6月には軍艦が尖閣諸島沖の接続水域に入り、鹿児島県・口永良部島沖で領海侵犯するなど緊張を高める挑発を行っており、事態は容易ならざる展開だ。
すでに中国は南シナ海をめぐる問題で、フィリピンの提訴による仲裁裁判所の判決で完敗している。中国の主張する境界線「九段線」に歴史的にも法的にも根拠はなく、中国が違法な岩礁埋め立てを行い、軍事施設を造営して侵略をしていることが明瞭になった。
わが国はアジア欧州会議(ASEM)首脳会議、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連外相会議などの機会に、中国に対して仲裁裁判所判決を受け入れて国際法に則(のっと)った行動を取るように要請したが、中国側は受け付けなかった。むしろ、わが国に対しても力ずくの尖閣諸島奪取の構えを領海侵犯で示しており、極めて横暴で覇権主義的な姿勢が懸念される。
このような強硬姿勢は、日本側からトラブルを引き起こすよう仕向けるための挑発とみられる。露骨な海洋進出に対する国際包囲網の形成や経済の後退で立場が弱くなる習近平国家主席が、政権浮揚のため反日愛国主義の力を借りようとしても不思議ではない。わが国は挙国一致して中国の暴挙に抗議し、尖閣諸島はわが国固有の領土であると繰り返す必要がある。
これまで岸田文雄外相、杉山晋輔外務次官が程永華駐日大使を呼び出して繰り返し抗議している。また、岸田外相はフィリピンを訪問し、ドゥテルテ大統領、ヤサイ外相と会談し、対策の強化で一致した。粘り強い対応が必要であり、同じ脅威に直面している諸国と連帯する外交を活発化すべきだ。
中国の強引な海洋進出に対処する上で、防衛力強化は極めて重要だ。安保法制によるグレーゾーン事態に備えた訓練・装備の強化、日米の連携などは抑止力として機能していることは疑いない。
米大統領選挙では民主党が同盟重視の綱領を採択し、一方、同盟関係見直しの発言を繰り返した共和党のトランプ候補は失言が相次ぎ劣勢だ。いずれが勝者となっても日米同盟関係の強化を期待したい。
顰蹙を買う国際法違反
南シナ海、東シナ海における中国の力による現状変更の暴挙には、国内外で一致して防衛のスクラムを組み、国際的な連帯で跳ね返すべきである。中国も今日、貿易立国として国際社会の中での繁栄を享受しているのであり、あからさまな国際法違反は世界中の顰蹙(ひんしゅく)を買うことになる。