伊方原発再稼働、「火力依存」脱却の加速を
四国電力は、伊方原発3号機(愛媛県)を再稼働させた。15日に発送電を開始し、来月上旬に営業運転に入る見通しだ。2011年4月に定期検査で停止してから約5年3カ月ぶりの運転再開となる。
新規制基準では5基目
新規制基準に基づく再稼働は九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)と関西電力高浜原発3、4号機(福井県)に続き5基目だ。
しかし、高浜原発は3月の大津地裁による運転差し止めの仮処分決定によって現在、停止している。稼働中の原発は川内原発の2基のみだが、これについては、鹿児島県の三反園訓知事が一時的な稼働停止を求める姿勢を示している。こうした状況の中、伊方原発が再稼働までこぎ着けた意義は大きい。
日本は2度のオイルショックの教訓から、原発を含めた電源の多様化に努めてきた。だが、福島第1原発の事故後に各地の原発が長期停止したことから、現在は電力の約9割を燃料コストの高い火力に頼る。国際情勢の変化により化石燃料の供給が途絶えるなどのリスクを分散させるためにも停止中の原発の再稼働を迅速に進め、エネルギー源の多様化を図る必要がある。
原発の利点は、エネルギー密度が高く備蓄が容易なため、エネルギー供給が途絶えたとしても、直ちに発電停止に陥ることはないことだ。エネルギー安全保障の観点からも原発の再稼働を促進することが求められる。
伊方原発は、使用済み燃料からプルトニウムなどを取り出して作ったウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使用するプルサーマル発電だ。世耕弘成経済産業相は、伊方原発の再稼働について「核燃料サイクルの推進という観点からも非常に意義がある」と述べた。
プルサーマルによって、ウラン資源を有効活用できるとともに、放射性廃棄物の量を減少させることができる。核兵器に転用可能なプルトニウムを余分に持たないことは日本の国際公約であり、この点からもプルサーマル再開は歓迎すべきことだ。
四電は、当初は想定する地震の揺れ(基準地震動)を570ガルと評価していたが、原子力規制委員会側の要求を受け、650ガルに引き上げた。さらに愛媛県の要望により、1000ガルの揺れにも耐えられるように耐震補強した。このほか、浸水対策や電源確保などを含め安全対策に約1700億円に上る資金を投資した。福島第1原発事故の教訓を踏まえた入念な備えがなされており、こうした取り組みは評価できる。
政府は昨年11月に伊方原発で原子力総合防災訓練を実施し、原発周辺の住民ら約1万3000人が参加。来月には、海上避難訓練も予定する。万が一に備え、引き続き住民の避難経路確保などに努めるべきだ。
規制委は迅速な審査を
政府はエネルギー基本計画の中で原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、規制委の審査で安全性が確認されれば、再稼働させることを明記しているが、再稼働に向けた動きは依然として緩慢だ。規制委は審査を加速させ、順次再稼働を進めることが大切だ。