中国機の挑発は緊張を高めるだけの愚行だ
防衛省統合幕僚監部は、領空侵犯の恐れがある中国機に対する航空自衛隊の緊急発進(スクランブル)が今年4~6月に199回だったと発表した。
四半期ベースでは1~3月の198回を上回り、過去最多となった。
対中緊急発進が過去最多
4~6月全体では前年同期比108回増の281回で、中国機が全体の約7割を占めた。統幕は「中国機は今までより活動するエリアを南下させており、引き続き拡大・活発化の傾向にある」と警戒している。
これまで東シナ海上空では、中国機の活動範囲は尖閣諸島(沖縄県石垣市)北方の一定のラインにとどまっていた。だが、最近では尖閣に向けて南下するケースが複数発生している。
先月半ばには尖閣周辺の東シナ海上空で、中国機と緊急発進した空自機が一時、互いの背後に回ろうと追尾し合う「ドッグファイト」のような状態に陥った。空自機はその後、相手のレーダーや誘導ミサイルを撹乱(かくらん)するための装置を作動させ、中国機と距離を取ったという。
政府は「特別な行動ではない」としているが、「(中国機が)空自機に対し攻撃動作を仕掛けた」とする元空自幹部の指摘もある。この指摘が事実であれば、危険極まりない行動であり、到底容認できない。
このところ中国は海上でも挑発をエスカレートさせている。先月は尖閣周辺の接続水域に中国海軍のフリゲート艦を初めて入らせたほか、情報収集艦が鹿児島県・口永良部島西の領海に侵入した。日中間の緊張を高める愚行としか言いようがない。
中国は南シナ海でも人工島を造成し、軍事拠点化を進めている。領有権紛争をめぐりフィリピンが中国に対して起こした国際仲裁手続きで、オランダ・ハーグの仲裁裁判所は今月に判決を下す。
判決は中国に不利な内容になると予想されている。尖閣周辺での海空の挑発行動は、判決前に東シナ海でも領有権主張をめぐって妥協しない姿勢を示す狙いだろう。
中国の習近平国家主席は中国共産党創立95周年の祝賀大会で、判決が出ることを念頭に「中国はわれわれの正当な権益を決して放棄しない。どの国もわれわれが核心的利益を差し出すと期待してはならない」と強調した。しかし、一方的な主張を繰り返しても孤立を深めるだけだろう。地域の大国として自制すべきではないのか。
尖閣は日本固有の領土だ。どれほど中国が圧力を掛けても、政府は尖閣を守り抜く決意を示すとともに、米国と連携して警戒・監視活動を強化する必要がある。
尖閣での灯台建設や陸上の動植物保護など実効支配を強める取り組みも欠かせない。
安保法廃止は非現実的
参院選では、民進、共産など野党4党が、集団的自衛権行使の限定容認を柱とする安全保障関連法の廃止を訴えて共闘している。
安保関連法は日米同盟を強化し、抑止力を向上させるためのものだ。中国の脅威が高まる中、廃止は非現実的だと言わざるを得ない。