ブラジルのルセフ大統領停職、リオ五輪への影響最小限に


 ブラジル上院がルセフ大統領に対する弾劾裁判の開始を賛成多数で決定し、ルセフ氏は最大180日間の停職となった。

 南米初開催となる8月のリオデジャネイロ五輪を前に、政治混乱が拡大したことは残念だ。ブラジル政府は五輪への影響を最小限に食い止めなければならない。

 混乱続くブラジル政治

 2011年にブラジル初の女性大統領に就任したルセフ氏は、財政を健全に見せるため、補助金などの政府支出を国営銀行に肩代わりさせたとして弾劾に問われた。今後、最高裁長官をトップとする弾劾法廷で裁かれ、上院の3分の2が弾劾に賛成すれば罷免される。

 ルセフ氏は徹底抗戦する構えで、弾劾裁判は数カ月続く見通しだ。リオ五輪は、国家元首が不在のまま開会を迎える異例の事態となった。

 ブラジルでは国営石油公社ペトロブラスを舞台にした汚職事件に加え、物価上昇や失業率悪化で国民の不満は強い。15年の国内総生産(GDP)成長率は6年ぶりのマイナスを記録し、今年もマイナス成長に陥るとみられている。

 ルセフ氏が停職に追い込まれた背景には、中国経済の減速や資源安など世界経済の変化に十分に対応できなかったことがある。ルセフ氏の停職中に大統領代行を務めるテメル副大統領は、不況脱却に全力を挙げなければならない。

 ブラジルでは14年のサッカー・ワールドカップ(W杯)開催の際、W杯への巨額公費投入に不満を訴えるデモやストライキが相次いだ。W杯では大きな混乱はなかったものの、リオ五輪がデモなどで妨害されないとも限らない。政治混乱の影響で、国民の間で盛り上がりが見られないことも気掛かりだ。

 リオ五輪に関しては、ルセフ氏の停職がテロ対策などに影響することを懸念する声も上がっている。ジカ熱の感染防止も重要だ。テメル暫定政権には国内外の不安を払拭(ふっしょく)することが求められる。

 テメル氏が所属するブラジル民主運動党は、ルセフ氏の労働党と連立を組んでいた。だが、ルセフ氏の政権運営に反発し、今年3月に政権を離脱した。

 テメル氏はルセフ氏を追い落とし、大統領に昇格することを狙っている。しかし、世論調査ではテメル氏の弾劾を求める回答の割合も高く、国民を納得させる結果が出なければ怒りの矛先が向かう可能性もある。

 ルセフ氏は貧困層対策に力を入れ、格差是正で一定の成果を上げた。これを評価する支持者は野党の弾劾攻勢に反発し、全国で抗議デモが相次ぐなど、社会不安が高まっている。ルセフ氏の停職が決定した際にも、議会周辺には弾劾支持派と反対派の衝突を防ぐため、多くの治安部隊が展開した。

 不毛な権力闘争やめよ

 テメル暫定政権にとっては、リオ五輪の成功のためにも、対立を深めた国民の融和が大きな課題だと言える。

 ルセフ氏支持派も含め、不毛な権力闘争に終止符を打って政治の安定に努めない限り、国際社会におけるブラジルの信頼が失われるばかりだ。