対中外交、「非は非」として主張貫け
中国を訪問した岸田文雄外相は李克強首相や王毅外相ら要人との会談で、両国関係改善に向けての対話継続で一致した。
しかし沖縄県・尖閣諸島周辺の日本領海に中国側が公船を不法に侵入させたり、南シナ海で人工島の軍事拠点化を進めたりしている問題について、双方の主張は平行線をたどり進展はなかった。その点は極めて遺憾だが、政府は対話継続を前向きに受け止めるとともに「非は非」として日本側の主張を貫くべきである。
岸田外相が要人と会談
日本の外相が国際会議以外で中国を訪問するのは4年半ぶりだ。中国がこの時期に岸田外相の訪問を受け入れたのは、第一に経済的苦境に陥った中国が日本との経済関係強化を望んでいるためだ。第二に台湾で日米との連携強化を目指す独立志向の蔡英文政権が5月末に発足するので、日台関係にくさびを打つ狙いがある。
第三に中国の国際的孤立が考えられる。中国は南シナ海における人工島建設などをめぐって国際社会の批判を浴びている。中国が最も嫌うのは、日本が米国とともにこの問題に積極的に介入することだ。中国には日本との関係改善によってそのような動きを封じる狙いがあるとみてよい。
外相会談は約4時間20分もの長時間にわたって行われた。双方が主張をぶつけ合ったことはいいことだ。言いたいことを言わずに遠慮することは「腹ふくるるわざ」とされ、今後に禍根を残す。
もっとも、中国側は相変わらず一方的な主張を展開した。王外相は自国の傍若無人な海洋進出を棚に上げて、日本が「中国脅威論」を撒(ま)き散らさないよう求めた。
これに対し岸田外相が強調したのは、国際ルールの尊重だ。中国のように「力による現状変更」を図ることは国際ルールに反しており、世界第2の経済大国にふさわしい態度とは到底言えない。
外相会談では、北朝鮮の挑発行動への「深刻な懸念」を共有し、国連安全保障理事会の制裁決議の厳密な履行を確認した。北朝鮮は今年1月に核実験を強行し、2月には事実上の長距離弾道ミサイルを発射。その後も弾道ミサイルやロケット砲の試射を繰り返した。
日本にとって、北朝鮮を抑える上で中国との連携は欠かせない。対北朝鮮問題では意思疎通を拡大し、協力関係を強化していくことが望ましい。
中国としては、失速気味の経済再建のために日本から投資を呼び込みたいとの事情もある。今年予定されている日中韓首脳会談や、9月の中国・杭州での主要20カ国・地域(G20)首脳会議開催を控えていることもあって、日本との関係改善を必要としている。
国際ルールの順守促せ
来年は日中国交正常化45年、再来年は日中平和友好条約締結40年となる。今年が関係修復のよい機会だとは言える。
日本は対北朝鮮政策や環境分野などで連携を強めるとともに、東・南シナ海問題をめぐっては中国に国際ルールの順守を促していく必要がある。