こどもの日、社会とつながり健全育成を
「その笑顔 未来を照らす 道しるべ」――。きょうは祝日「こどもの日」である。祝日法では「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」(2条)日と定めている。
笑顔が表す子供の幸福が明るい家庭と社会、日本と世界の未来を築いていく。母親への感謝、豊かな愛情に包まれ、子供が個性豊かにたくましく育っていける家庭、地域、社会づくりの大切さに改めて思いを寄せる一日としたい。
官民一体の取り組み増加
厚生労働省などが音頭取りする児童福祉週間も毎年、「こどもの日」のきょうから始まる。子供の健やかな成長について国民全体で考える1週間で、各種行事などが行われる。冒頭はその一つで、全国からの応募4751作品の中から選ばれた今年の最優秀標語で、福島県の増戸(ましと)遥(はるか)さん(13歳)が作った。
未来の担い手である子供たちは社会と国の宝である。それぞれの意志で困難にも立ち向えるたくましさと個性を育むことを願い、その可能性を大きく引き出せるように社会と環境を整えることで応援していきたい。
近年、子供の環境を考える上で問題となっているのが子供の貧困率である。所得が国民全体の標準の半分に満たない貧困家庭で暮らす子供の割合は、2012年から16%台が続いている。ほぼ6人に1人に当たる子供が貧困の中にあり、一般的に安心して勉強に励める環境にないことを意味している。
低所得の家庭の子供は食生活なども乱れがちで、高校や大学進学率も低いとする調査もある。安定した就職にも不利な立場に追い込まれるケースが目立つという。
子供の貧困対策法が一昨年1月から施行され政府や自治体が対策を行う中で、民間のNPO法人なども、こうした困難を抱える子供たちに手を差し伸べるべく動き出している。昨年4月に始まった生活困窮者の自立支援制度では、子供を学習支援する民間団体への自治体による補助が盛り込まれ、すでに東京都などが行っている。東京都練馬区では今年度から、民間委託で区内の一部で行っていた中学3年生の学習支援を全区内に拡大する。
学習支援だけではない。すでに東京都豊島区ではNPO法人が月に2回、夕食を民家で子供たちに300円で提供する取り組みを行っている。官民一体となった取り組みが各地で増えていることは歓迎したい。
基本的な生活習慣が重要
一方、子供の貧困と学習を考える上で、興味深いデータがある。お茶の水女子大の研究グループ(代表・耳塚寛明教授)が行った調査では、貧困家庭でも学力が高い児童生徒に「生活習慣(朝食を毎日食べている、同じくらいの時間に就寝・起床、テレビやゲームの時間が少ない)、読書や新聞を読む、図書館に行く、親子で勉強や成績の話をする、などの行為が特徴的に見られた」(「En‐ichi」昨年11月号)という。また、親の学校や地域とのつながりの豊かさが貧困による学力格差の縮小を補っているというのも、見逃せない指摘である。