憲法記念日、現実問題に対処できる改正を


 憲法記念日を迎え、全国各地で憲法関連の行事が開催される。日本国憲法制定の意義を踏まえながら、わが国の戦後の歩みの中で直面した課題を整理し、国家百年の大計として憲法を考えて現実問題に対処できる改正に国民を挙げて取り組むことを呼び掛けたい。

解釈で国論二分する弊害

 今日わが国が直面している問題は、人口減少、大災害、安全保障などに大別できよう。これらの危機に対処するには、憲法に家族・家庭の尊重を明記し、大規模災害に迅速な対処をなしえるよう緊急事態条項を加え、国の独立と国民の安全を守るための自衛権とそのための戦力の保持を定めるべきである。

 日本国憲法は日本の敗戦によって占領下に連合国軍総司令部(GHQ)の指導で制定された経緯から、旧憲法に明記された軍や緊急事態についての条文もなく、軍事等は進駐軍に委ねられた。

 講和条約発効による独立回復後、本来あるべき主権国家体制を整える憲法を制定することなく解釈で法整備を行ってきた。しかし、国論を二分する弊害も大きかった。

 昨年は安全保障関連法をめぐる国会内外の混乱があったが、国の自然権である自衛権を否定する9条解釈をする学者がいる中で自衛隊が存在する矛盾が改めて露呈した。

 今日、共産党、社民党を除く各党大多数が自衛隊を支持しており、国民世論の圧倒的支持もある。条文できちんと定めることが望ましい。

 また、東日本大震災から5年にして熊本地震が起きた。日本列島は地震、津波、台風など宿命的に自然災害と向き合っており、いつまた巨大災害が起こらないとも限らない。

 広域的に自治体機能が喪失するほどの大規模な災害もあり得る。このような大災害に可能な限り対処するには、国に権限を集中させ、緊急輸送路の確保、迅速ながれき処理を可能にする必要がある。

 東日本大震災の直後には統一地方選が行われたが、被災3県の選挙は延期になった。大規模災害が憲法で任期や改選を決められている国会議員の選挙と重なった場合、非常事態による任期延期規定も決めておくのが筋だろう。

 さらに深刻な問題は人口減少である。2004年をピークに国民が減り、50年には1億人を割り込むと推計されている。少子化の進行と高齢化率の上昇は経済を停滞させ財政を圧迫し始めている。

 憲法13条、14条によって個人の自由、平等が説かれ、差別が撤廃されたが、自由を謳歌するための拝金主義を国民の意識に植え付けたと言えまいか。

 家族条項で少子化克服を

 子供が増えない高齢化社会とは、戦後の自由な個人主義が横溢した世代の行き着いた姿でもある。孤独な老後は深刻な社会問題になった。

 憲法は公教育の規範であり、教育過程で国民に大きく影響する。いま家族・家庭の価値観を再認識するためにも家族条項を憲法に設け、人口減少の課題を100年後には乗り越える展望を持ちたい。