五輪候補の賭博、国民の期待裏切る愚行だ


 リオデジャネイロ五輪のバドミントン男子シングルスでメダル獲得を期待されていた桃田賢斗選手(NTT東日本)が、所属先の先輩の田児賢一選手らとともに、国内の違法カジノ店で賭博をしていた。

 日本を代表するスポーツ選手としての自覚を欠いていると言わざるを得ない。国民の期待を裏切る愚行だ。

 違法カジノ店に出入り

 桃田選手は昨年、世界選手権男子シングルスで日本勢初となる銅メダルを獲得し、トップ選手が集まるスーパーシリーズ・ファイナルでも優勝した。世界ランキングは現在2位で、5月5日付ランキングで決まるリオ五輪出場は確実だった。

 しかし、日本バドミントン協会は桃田選手を日本代表として日本オリンピック委員会(JOC)に推薦することに否定的な見解を示している。五輪出場は絶望的な状況となった。

 両選手は東京都内の違法カジノ店で賭博行為を繰り返し、桃田選手は計50万円、田児選手は計1000万円負けたという。2人とも海外遠征でカジノに出合い、桃田選手は記者会見で「入ってはいけない所に入る好奇心があった」と語ったが、自らの軽率さに気が付かなかったのだろうか。

 桃田選手は2013~15年度には日本スポーツ振興センター(JSC)から強化費として計180万円を助成されていた。国民の税金である強化費を受け取る立場で違法賭博を行っていたことは看過できない。バドミントン協会はきょうの臨時理事会で処分について協議するが、厳しい姿勢で臨む必要がある。

 違法カジノ店は、店側の利益が大きく、暴力団が経営に関与するケースも少なくない。両選手とも反社会的勢力との関わりは否定しているが、両選手が出入りした店では昨春、経営者や指定暴力団系幹部らが賭博開帳図利容疑で逮捕されている。暴力団を利するような行為が許されないのは当然だ。

 収入の多いスポーツ選手は反社会的勢力に狙われやすい。プロ野球巨人の4投手による野球賭博問題は記憶に新しい。

 バドミントンのトップ選手も世界大会で多額の賞金を獲得する。桃田選手はこれまで計約2700万円の賞金を得ている。トップ選手は子供たちのあこがれの存在でもあり、手本となるべき立場だ。精神面でも厳しい自己管理が求められる。

 桃田選手は香川県出身だが、福島県にあるバドミントン強豪校の富岡第一中学、富岡高校に進学。高校1年の時に東日本大震災が発生した。「まだまだ満足に生活できない人、つらい思いをしている人たちのために、自分がもっともっと頑張らないといけない」と誓っていただけに、今回の不祥事は返す返すも残念だ。被災者をどれほど落胆させたかを考え、猛省しなければならない。

 再発防止策の徹底を

 NTT東日本では両選手以外にも、OBを含めて男子6選手が違法賭博をしていた。田児選手が彼らから計1150万円を借りて賭博をしていたことも明らかになっている。危機感を持って、選手教育など再発防止策を徹底すべきだ。