FIFA新会長、急がれる金権体質の改善
国際サッカー連盟(FIFA)は、不透明な金銭の授受で資格停止となったブラッター前会長の後任に、欧州連盟(UEFA)事務総長のジャンニ・インファンティノ氏を選出した。
組織再生と信頼回復に向け、金権体質の改善が急がれる。
汚職捜査は一層の進展も
FIFAでは昨年5月、贈収賄とマネーロンダリング(資金洗浄)などの罪で現職副会長ら14人が米司法省によって起訴された。大会の放映権やワールドカップ(W杯)招致などに絡んで多額の金銭を受け取った疑いによるものだ。
さらに昨年12月、FIFAは当時のブラッター会長が2011年にプラティニ副会長に顧問料として200万スイスフラン(約2億6000万円)を支払ったことを不正と判断し、両氏に8年間(後に6年に軽減)の資格停止処分を科した。
45歳のインファンティノ氏はUEFA会長でもあるプラティニ氏の代役としてFIFA会長選に出馬し、W杯の出場枠を現行の32から40に拡大するなどの公約を掲げて当選した。「新しいFIFAの時代を築くために、皆さんと働く。フットボールをもう一度、ステージの中央に戻したい」と抱負を述べたが、そのための課題は山積している。
一連の汚職事件に関しては起訴された関係者が40人近くに上っているが、米司法省は捜査のさらなる進展を示唆している。金権体質の根深さを物語るものだと言えよう。
事件の前から、FIFAは組織の透明性欠如などを繰り返し批判されてきた。インファンティノ氏は捜査に全面協力してウミを出し切るとともに、抜本的な組織改革に踏み出さなければならない。
FIFA改革委員会は昨年11月、理事会の再編による権力の分散や財政の透明化、会長と理事の任期を最長3期12年とする改革案をまとめた。会長選に先立ち、改革案に基づく改正規約も承認された。汚職の根絶につなげてもらいたい。
もっとも、加盟209カ国・地域の協会への資金分配というインファンティノ氏の公約に対しては、財源の確保を疑問視する声や「ばらまき」との批判も出ている。汚職事件の影響でスポンサーが離れ、FIFAの15年の収支は1億800㌦(約123億円)の赤字になるとみられており、15~18年の4年間の計画でも現時点で5億5000万㌦(約627億円)の未達が判明した。
公約実現には、改革を進めて信頼を回復する以外にない。ブラッター氏はさまざまな資金援助によって各協会の支持を集めた。この手法が組織内外の金権体質を生み出し、汚職を招いた一因になったとされる。
経済支援が競技の普及に欠かせないことは確かだが、体質改善には透明性確保の徹底を図る必要がある。
指導力発揮で新風を
FIFAに加盟する209の国・地域は、発展の度合いもそれぞれ違う。
インファンティノ氏には多様な価値観を持つ各協会をまとめていく指導力も求められる。FIFAに新風を吹き込んでもらいたい。