大阪府警で捜査資料放置、被害者の立場で管理徹底を


 大阪府警で、既に公訴時効が成立した計約4300事件の捜査書類や証拠品などが、本来の保管場所ではない所に放置されていたことが明らかになった。

 中には、30年以上前の資料もあったという。ずさんな管理が常態化していたことに唖然とさせられる。

大阪府警で調書や遺留品

 放置されていたのは、被害者の証言をまとめた調書や実況見分調書、遺留品などだ。段ボール箱などに入れられ、ボイラー室や署内の倉庫から見つかったという。

 刑事訴訟法は、警察官が犯罪の捜査をした時は原則、速やかに書類や証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならないと規定している。法で定められた手続きさえも行われていなかったことになる。あきれるばかりの怠慢だ。

 約1000事件では容疑者らの氏名が書類に記載されていたが、その後に捜査した形跡がないものもあった。結果的に「逃げ得」を許したことになる。これでは再犯を招くことにもなりかねない。

 大阪府警では、羽曳野署で2012年、複数の事件の捜査書類や証拠品などが保管場所ではない機械室で見つかった。この中には、1997年の傷害事件の逮捕状請求書や凶器などもあった。事件の被害者からは再三問い合わせが寄せられていたが、まともに対応せずに放置していたという。

 これを受け、全署を対象に調査したところ、9割を超える61署でこうした現状が発覚した。調査はまだ終了しておらず、今後さらに件数が増える可能性もある。まずは徹底的にウミを出し切らなければならない。

 急を要する事件に着手する中で忘れられたケースもあるようだ。確かに、放置された資料の大半は傷害や暴行、横領事件に関するもので、殺人などの重大事件はなかった。

 しかし、優先度が高くないとの理由でずさんに扱うことが許されるわけではあるまい。こんなことがまかり通れば被害者はたまらない。

 こうした問題は大阪府警にとどまらない。警視庁では14年、時効が成立した約3500事件の証拠品約1万点が、都内約60署の倉庫などに放置されていたことが明らかになった。愛知県警津島署でも同様の問題が発覚している。全国の警察でもチェックが必要だろう。

 捜査資料放置の原因として、引き継ぎの不備も指摘されている。大阪府警では14年から事件の受理簿などの捜査書類をオンラインで一括管理する「捜査支援システム」を運用している。放置されていた資料には、システム導入以降のものは含まれていないという。捜査員不足を補いつつ、今回のような問題の再発を防ぐ体制構築を急がなければならない。

市民の信頼を裏切るな

 市民の多くは、警察官が強い正義感と使命感を持って事件の捜査に当たっていると信じている。今回の問題は、こうした信頼を裏切るものだ。

 犯罪の被害に遭えば警察に頼るしかない。被害者の立場に立って捜査に臨む以外に信頼回復の道はない。

(2月13日付社説)