対北制裁、安保理の決議採択につなげよ
政府は国家安全保障会議(NSC)で、核実験や事実上の長距離弾道ミサイルの発射を強行した北朝鮮への日本独自の制裁措置を決定した。過去に一部解除した制裁の復活や現行制裁の強化に加えて新規の措置を盛り込んだ。これを国連安保理での制裁決議の早期採択につなげる政府の外交努力が必要だ。
消極的姿勢を示す中国
制裁は、再入国禁止の対象を核・ミサイル技術者に拡大し、北朝鮮籍を持つ人の入国を原則禁止するなど、人の往来規制を強化するものだ。人道目的を含む全ての北朝鮮籍船舶のほか、北朝鮮に寄港した第三国籍船舶の入港も禁止した。金融関係では、北朝鮮への送金について、人道目的で10万円以下の場合を除き原則禁止。現金持ち出しも、10万円超には届け出義務を課し、制裁緩和前に戻した。
北朝鮮は国際世論を何とも思わない傍若無人の姿勢を取り続けている。痛みを感じさせるような新規制裁措置が不可欠だ。
一方、韓国政府も南北の経済協力の象徴である開城工業団地の操業停止に踏み切った。米上院も対北制裁強化法案を可決した。制裁に実効性を持たせるには、国際社会との緊密な連携で抜け穴をふさがねばならない。人的往来や交通の制限、金融資産凍結などは一国だけ実施しても効果は限定的である。
菅義偉官房長官は「何が最も効果があるのかという観点から今回の措置を取った。我が国の対応が国連安保理の速やかな決議につながることを期待したい」と説明した。
安保理は過去の核実験などについても対北制裁を科してきたが効果はなかった。常任理事国の中国が強力な制裁に消極的な姿勢を示してきたからだ。北朝鮮の最大の後ろ盾となっている中国は、金正恩政権の動揺や弱体化は自国の安全保障へのマイナスと考えている。だが、北朝鮮の核戦力と弾道ミサイルは中国への脅威にもなりかねないことを忘れてはなるまい。
北朝鮮は貿易額の7割が対中国で経済の対中依存度は高い。中国は在韓米軍との緩衝地帯として北朝鮮を重視している。だが、暴走を続ける北朝鮮をいつまでも擁護し続けるのは困難であろう。安保理常任理事国としての立場は傷つき、北朝鮮の暴走は中国のせいだとの国際的批判を浴びることになる。
暴挙を重ねる北朝鮮を止めるには、関係国の連携とともに安保理による厳しい対北制裁が必要であろう。ところが、安保理は1月の核実験に対しての制裁決議を採択していない。中国が反対しているためだ。
中国はことあるごとに「北朝鮮との対話」を主張するが、説得力はない。北朝鮮はミサイル発射の自制を求めた中国の要請にも耳を傾けなかった。日米韓などは安保理での強力な制裁決議の早期採択に向けて中国を説得すべきだ。
拉致問題解決に生かせ
日本が一昨年、独自制裁の一部を解除したのは、日本人拉致問題を進展させるためだった。だが、北朝鮮は拉致被害者らの再調査結果の報告を先送りしている。今回の独自制裁を拉致問題の解決にも生かさなければならない。
(2月12日付社説)