高浜再稼働、原発技術向上にも取り組め
関西電力の高浜原発3号機(福井県高浜町)が2012年2月以来、3年11カ月ぶりに再稼働し、1日から発電と送電を始めた。関電は状況を見ながら段階的に出力を上げ、今月下旬には営業運転に移行する見通しだ。また核燃料の搬入を始めた同4号機は、今月下旬の再稼働を目指している。
プルサーマルで活路
原子力規制委員会の新規制基準に適合した原発ではすでに昨年、九州電力川内原発1、2号機が再稼働しており、高浜原発は2カ所目だ。同原発はプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使用するプルサーマル発電で初の再稼働となる。
MOX燃料は原発から出る使用済み核燃料から燃え残ったウランとプルトニウムを取り出して作る。エネルギー資源の乏しいわが国では、使用済み燃料の再利用で核燃料サイクルの実現を目指してきた。その一環がプルサーマル発電で、これを機に核燃料サイクルの活路を見いだしたい。
今回の再稼働で京都府の山田啓二知事は、30㌔圏の全自治体を再稼働の同意の対象に加えていないことを批判するとともに、安全確保、避難計画の実効性向上に全力で取り組むとのコメントを発表した。
もちろん、安心・安全は最優先課題だ。各原発ごとに内閣府が半径30㌔圏内の自治体と協議し、策定を進めている国の広域避難計画も不断の見直しが求められよう。東京電力福島第1原発事故以前は、原発の無謬(むびゅう)論が言われ、避難計画の策定自体が事故の可能性を強調するものとして排除されてきた。
日ごろの備えを踏まえ、一段階一段階ステップアップしていくのが、防災や避難訓練の要諦である。今日、地震など自然災害に備えて定期的に実施される避難訓練で明らかなように、性急さは却(かえ)って現実的で有効な防災対策を阻害しかねない。今後、原子力に関する啓発を広く行い、防災訓練を重ねていく必要がある。
一方、わが国は再生エネルギーの開発を進めてきた。中国を見ても、確かに風力発電を精力的に推進しているが、それ以上に原発建設に力を入れている。日本では研究の停滞している高速増殖炉についても、ロシアの技術を導入して開発を加速している。
また米政府は、温室効果ガスの排出削減に向け、官民折半の新型原子炉「溶融塩高速炉」開発に多大の投資を行う計画を発表。韓国でも140万㌔㍗クラスの25基目の原発による送電を開始している。わが国のエネルギー政策、環境政策の一環として、原発技術の向上に以前にも増して取り組むべきだ。
期待される地域活性化
関電は東日本大震災の前、大手電力の中で原発依存率が最も高く、震災後の原発停止によって収支が急速に悪化し、この間2度にわたり電気料金の本格値上げを行った。今回の再稼働で5年ぶりに純損益が黒字化する見込みだ。
地元経済界では、原発に依存する中小企業が少なくなく、経済活性化を期待している。安全性の追求とともに決して無視できない要素である。
(2月2日付社説)