強制棄教裁判、信教の自由守った画期的判決
成人男性を拉致監禁し宗教団体からの脱会を強要したとして総額2200万円の損害賠償の支払いを命じられた親族と職業的改宗活動家、牧師の上告審判決で、最高裁第3小法廷(大橋正春裁判長)は職業的改宗活動家や牧師らの上告を棄却した。
国連機関が憂慮表明
男性は12年5カ月にわたり拉致監禁され、世界平和統一家庭連合(旧世界基督教統一神霊協会)からの脱会を強要された「全国拉致監禁・強制改宗被害者の会」の後藤徹代表(51)。これで後藤氏の勝訴が確定した。
後藤氏は1995年9月、改宗活動家の宮村峻氏らの指導を受けた両親、兄夫婦、妹らに、東京都保谷市(現西東京市)の実家から新潟市内のマンションに拉致された。同所で1年9カ月間、その後連行された東京・荻窪のマンションで10年以上、計12年5カ月間監禁され棄教を迫られた。
解放後、後藤氏は改宗活動家らを刑事告訴したが、被告訴人全員は「嫌疑不十分」の不起訴処分に。その後、民事訴訟を起こし、東京高裁の須藤典明裁判長によって昨年11月、これを覆す判決が下された。
強制的な棄教行為について、これまで裁判所が「監禁」という言葉を使い、審理の過程で違法行為と認定した事件は2件あった。家庭連合の女性信者に対する1年4カ月にわたる強制棄教事件と、エホバの証人の女性信者に対する17日間の同事件だが、須藤判決は、12年5カ月の全期間における不法な強制棄教行為、監禁を認定した。日本の宗教史上、画期的な判決だ。
従来、強制棄教事件について、手掛けた加害者側は「子弟を反社会集団から救出するための情愛にもとづいた家族の会話」などと行為を正当化するのが常套(じょうとう)戦術だった。司法は、この主張に屈するかのように「基本的人権」「信教の自由」の擁護を正面から審理の基盤に据えることを避け続けた。
しかしこの間、日本司法の審理の在り方を厳しく批判する声は、国際NGO「国境なき人権」(ウィリー・フォートレ代表)など国内外から高まってきた。
その中で、国連機関「自由権規約人権委員会」は2014年7月、日本の人権状況に関する審査最終報告書を公表。日本の“新宗教信者に対する拉致監禁強制的棄教活動”について「市民的および政治的権利に関する国際規約(自由権規約)」違反を明確に認めた。
その上で「(日本など)締結国は、全ての人が選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由を侵害するおそれのある強制を受けない権利を保障するための、有効な手段を講ずるべき」だとした。
国連史上初めて、日本における強制棄教問題に関する懸念が表明され、解決を迫ってきたわけだ。須藤判決が、そうした内容を踏まえていたことは、間違いない事実だろう。
強制棄教根絶目指せ
家庭連合によると、過去40年間に、信者約4300人が何らかの強制的な力による棄教を迫られてきた。昨年1月に失踪以後、監禁されていると思われる男性のケースもある。拉致監禁・強制棄教の根絶を期したい。
(10月6日付社説)