米中首脳会談、米は中国への幻想捨てよ
オバマ米大統領と中国の習近平国家主席が首脳会談を行い、米中協力の重要性を確認したものの、安全保障問題では議論がかみ合わず、抜本的合意の難しさを露呈した。
南シナ海問題で対立
習主席は今回、初めて国賓として米国を訪れた。訪米は2013年以来2年ぶりとなる。会談では、オバマ大統領が中国による南シナ海の岩礁埋め立てに「懸念」を重ねて表明。これに対し、習主席は「南シナ海の島は中国固有の領土。領土主権と海洋権益を維持する権利がある」と反論した。手前勝手な主張だと言わざるを得ない。
南シナ海問題については、米上院軍事委員会でハリス太平洋軍司令官が、中国が「3000㍍級の滑走路3本を建設している」と証言。「軍事上、重大な懸念をもたらす」と強調した。米国はフィリピンやベトナムなどの関係国と連携し、中国への牽制(けんせい)を強める必要がある。
サイバー問題をめぐっては、米中両国政府がサイバー攻撃による企業秘密などの窃取を実行あるいは支援しないことを確認し、閣僚級の対話メカニズムを創設することで合意した。
オバマ大統領は、中国からの米政府機関や企業へのサイバー攻撃に対して厳しい姿勢を示してきた。米側は、軍事・経済機密の管理は国益に直結するものであり、サイバー空間は21世紀の覇権を争う最新の戦場となっているとの認識がある。
一方、習主席は「中国も被害者だ」と反論し、両国が共同で情報提供やサイバー犯罪の捜査を進める形となった。オバマ大統領は、今回の合意が「まだ実施されていない」と述べ、中国側の取り組みを見守りつつ、サイバー犯罪を追及するため制裁の発動は辞さないと警告した。
習主席は国家副主席時代から米中の「新型大国関係」という持論を掲げている。しかし、米国に中国の核心的利益を尊重させることで、強引な海洋進出や国内の人権軽視を正当化することがあってはならない。自らを大国だというのであれば、責任ある行動が求められよう。
中国経済の減速も世界に大きな影響を及ぼしている。習主席は会談前に「発展の過程で生じている問題」として、中国経済の先行きに過度の懸念は無用との認識を示した。だが求められているのは、市場原理に基づく消費主導型経済への移行や人民元改革の継続である。
米国は改革開放以降の中国と積極的に関わることで、中国が米国の描く国家に変わるという期待を抱いてきた。だが、こうした楽観的な見方は大幅に薄れ、米国では中国への建設的関与に効果がないということが意識され始めている。
建設的関与とは、中国の経済を発展させ、先進諸国の仲間入りに向け協力すれば、いずれ中国は先進国と同じ価値観を持ち、民主化も進むだろうという考えだ。民主化に伴って共産党独裁体制も溶解していくとの期待も当然含まれる。
関与の在り方検討を
冷戦時代の対ソ連「封じ込め」は過去の遺産であろう。中国に対しては、基本は「関与」だが、今後はどう関わっていくのか。検討の時期である。
(9月27日付説)