国連創設70年、改革しないのは不合理だ


 今年は国連創設70年の節目の年だ。第70回国連総会が始まり、28日からの一般討論演説で世界160カ国以上の元首・首脳が所信表明する。

 安倍晋三首相、オバマ米大統領、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席、韓国の朴槿恵大統領らの演説が予定されている。

秩序壊す常任理事国も

 国連が戦後の平和構築に果たしてきた大きな役割は否定できない。だが第2次世界大戦終結から70年も経(た)ち、加盟国が当初の51カ国から193カ国に拡大した今もなお機構改革が行われていないのはおかしい。

 現状では平和維持の主要な役割を安全保障理事会(15カ国)が担い、米英仏露中の5常任理事国に拒否権という絶大な特権が与えられている。しかし、ロシアはウクライナ危機の当事者であり、中国は南シナ海問題で平和の撹乱(かくらん)者と見なされている。両国とも特権にふさわしい責任を果たすどころか、国際秩序破壊の先頭に立っている。

 日本、ドイツ、インド、ブラジルの4カ国グループ(G4)は今年、常任理事国入りを目指して新たな改革案を国連に提出した。改革案は常任理事国を現在の5カ国から11カ国に拡大し、理事国を25ないし26カ国にしようとするものだ。

 日本はG4メンバーと共に月末をめどにニューヨークで外相会談を開き、改革への機運を高めたい考えだ。大いに結構であり、4カ国の結束を固め、今後の活動方針を討議するよい機会となろう。

 G4は2005年7月にも改革案を出したが、この時は特権的地位を失うことを恐れた米中露の反対とともにアフリカ諸国の案との一本化失敗によって廃案となった。安保理改革については、多くの国が種々の案を提示している。

 そこで不可欠なのは改革案の一本化である。改革の規模、新常任理事国の拒否権をどうするかなど詰めるべき問題は多い。今後実施する必要があるのは一本化のための多国間交渉だ。日本は常任理事国入りを望むのであれば、その点でもイニシアチブを取ることが求められる。

 国際社会では「なぜ安保理がいまだに第2次大戦の戦勝5カ国に支配されているのか理解に苦しむ」といった声が有識者の間で高まっている。1995年の国連総会で「死文化」が確認された国連憲章の旧敵国条項の削除が実現していないのもアナクロニズムだ。

 この条項は第2次大戦で連合国の敵であった日本など枢軸諸国に対する自由な武力行使を認めている。国連分担金支出で米国に次ぐ日本に「カネは出させるが、国際的役割は果たさせない」では全く不合理であり、黙っている手はない。

最大の障壁となる中国

 国連改革に最も強く反対しているのは中国だ。中国外務省は国連創設70年に関する「立場文書」を発表した。

 その中で「国連は世界反ファシズムの戦争の勝利の成果」とした上で「国際社会は成果を守る必要がある」と強調して改革に反対している。最大の障壁が中国であることを忘れてはならない。

(9月26日付社説)