18歳成人、青少年健全育成法が前提だ
選挙権年齢が18歳以上に引き下げられたのを受け、民法の成人年齢や少年法の適用年齢の引き下げ論議が活発化している。引き下げには青少年健全育成の基盤整備が不可欠だ。「成年」は権利とともに義務も担う。そのことに留意した論議が必要だ。
飲酒・喫煙は悪影響
自民党の政調審議会は民法の成人年齢を20歳から18歳に、少年法の適用年齢を20歳未満から18歳未満とする提言をまとめた。来夏の参院選から選挙権年齢が引き下げられるだけに成人年齢についても早急に結論を得る必要はある。
だが、成人年齢に関連する法律は民法や少年法のみならず、喫煙や飲酒法のほか、銃刀法や競馬法など約200件に上る。これらすべてを「18歳」とするのは乱暴過ぎる。自民党の提言も、飲酒や喫煙、ギャンブルの解禁年齢については20歳と18歳の両論を併記している。
成人年齢について法制審議会の答申(2009年)は「18歳成人」を適当とするものの「現時点で引き下げを行うと、消費者被害の拡大など様々な問題が生じる恐れがある」と、引き下げに伴う問題点も指摘していた。
成年になれば「親権」から離れ、自動車購入などのローン契約や消費者金融からの借り入れも可能になるが、18~19歳の半数以上は学生だ。社会の商慣習に不慣れで、マルチ商法などの被害に遭い、困窮化を招きかねない。それで答申は自立支援策を促していた。
それ以上に問題なのは、18歳から飲酒や喫煙を認めれば精神・肉体的に悪影響を及ぼすことだ。日本禁煙学会など18団体は「病気や依存症、犯罪のリスクを高め、危険だ」として引き下げに反対している。自民党の文部科学、厚生労働部会も「教育現場の混乱や若年者の健康の保持・増進への悪影響などが甚大」と反対している。
例えば、高校3年生が校外で喫煙したり居酒屋などで飲酒したりすれば、17歳の同級生や低学年生徒も同調し、風紀が乱れ、犯罪を助長しかねない。ネット犯罪の低年齢化も危惧される。そうした問題が18歳成人で生じないか、法律ごとに精査する必要がある。
それだけに引き下げは青少年を健全育成する基盤整備が前提となる。それには青少年健全育成法の制定が不可欠だ。同法は青少年の健全な育成のために家庭、学校、地域などの役割と責任を明示し、そのための施策を講じる基本法だ。条例は多くの自治体で制定されている。
条例では保護者に対して18歳未満の子供を午後11時以降に外出させず、深夜にゲームセンターなどに入店させないよう求めるところも少なくない。こうした施策を国が徹底しておけば、殺害された大阪府寝屋川市の中1男女生徒を守れたはずだ。
義務と責任の自覚必要
「18歳投票」へ「主権者教育」が叫ばれているが、主権者という権利意識だけでは足りない。権利には義務と責任が伴う。それを果たしてこその成人だ。その意識向上には規範意識を高め、国や社会への「義務と責任」の自覚が必要となる。このことにも留意して引き下げ論議を進めていくべきだ。
(9月22日付社説)