火山活発化、噴火への備えを万全にせよ
日本列島で火山活動が活発化している。今月も熊本県・阿蘇山の中岳(標高1506㍍)第1火口で噴火が発生し、噴火警戒レベルが2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げられた。全国で噴火への備えを万全にすべきだ。
阿蘇山で初の速報発表
阿蘇山の噴火は、地下水がマグマに直接触れて爆発的に水蒸気になったものと推定されている。噴煙が火口の縁から約2000㍍上がったほか、火砕流が発生したことも確認された。噴火当時には、火口近くに観光客がいたが、全員避難してけが人はなかった。
昨年9月に58人という戦後最悪の犠牲者を出した御嶽山(長野・岐阜県境)をはじめ、今年に入ってからも口永良部島(鹿児島県)、浅間山(長野、群馬県境)、箱根山(神奈川県)、桜島(鹿児島県)などが相次いで噴火した。
日本では17世紀から19世紀まで、各世紀に大噴火が4回以上起きたが、20世紀は異常に静かだったと言われる。専門家は今後、大規模な噴火が増えると予想している。備えを強化する必要がある。
阿蘇山噴火の際、気象庁は噴火速報を初めて発表した。御嶽山噴火を受けて今年8月に導入され、常時観測する47火山で①久しぶりに噴火した場合②普段の噴火を上回る規模で噴火した場合――に5分以内をめどに伝達。登山者や周辺住民に直ちに安全を確保するように呼び掛けるものだ。今回のケースを検証し、運用改善を進めてほしい。
総務省消防庁が昨年11月に公表した調査結果によると、47火山のうち、噴火時に登山者や観光客を守る避難シェルターは12火山にしか整備されていない。政府は地元自治体を支援し、全ての火山で避難施設の設置を急ぐべきだ。
7月に成立した改正活火山法では、「火山災害警戒地域」に指定される50火山の周辺自治体に、火山防災協議会の設置を義務付けた。自治体は協議会の議論を踏まえ、住民や登山者の避難計画や被害が及ぶ範囲を示したハザードマップを作る。火山の登山者が氏名や入山経路などを記した登山届を提出する努力義務規定も設けた。被害の軽減につなげたい。
こうした取り組みには、専門家の養成が欠かせない。現在、大学や公的研究機関の火山研究者は約80人しかいない。このため、文部科学省は火山観測と噴火・降灰予測の技術開発を通じて研究者を育成するプロジェクトによって約160人に増やすことを目指している。
阿蘇山の地元では、きょう始まる秋の大型連休(シルバーウイーク)における観光産業への影響を懸念する声も上がっている。もっとも、噴火の影響があるのは火口から半径4㌔の圏内のみだ。今回を上回る規模の噴火が起きる可能性も低いとみられている。地元自治体などは、風評払拭(ふっしょく)へ適切な情報発信に努めるべきだ。
今後も利用を進めたい
噴火は恐ろしいが、一方で火山は温泉や地熱などの恩恵を与えてくれる存在でもある。災害への備えを強めた上で、今後も火山利用を進めていきたい。
(9月19日付社説)