防災の日、「減災」のため自助の力培え
きょうは「防災の日」。わが国は地震や火山噴火が多い上、山と平地と海が近接しているため、水害に襲われる危険性が常にある。自然災害の多い列島に生きていることを国民一人一人が自覚して「自助の精神」を培いたい。
海岸防災林の再生も
全国で地震や火山活動が活発化している。火山噴火では昨年、御嶽山(長野県、岐阜県)で多くの登山者が犠牲になった。また今年、口永良部島(鹿児島県)の新岳や桜島(同)の爆発的噴火で、住民が避難した。箱根山(神奈川県)でも火山性地震が続いている。
口永良部島では、新岳の火口から4㌔余り離れた鉄筋コンクリートの施設を避難所に定め、避難訓練を行っていた。突然の噴火に対応できたのは、こうした自助の心構えがあったからだ。火山を抱える自治体は日頃から噴火に対する各種の備えを万全にしたい。
今年、東日本大震災から4年を迎えた。復興と同時に、防災活動が進んでいる。海岸防災林の再生活動はその一つ。宮城県では、自治体や地元有志らが、丈夫で成長が早い「コンテナ苗」を使った植樹を行っている。津波などの自然災害で被害の最小化を図るためだ。
また同震災を教訓に、いざという時に住民が逃れられるよう、高速道路や幹線道路の盛り土部分に避難階段を設置する取り組みが全国的に広がっている。国土交通省の調査では、3月末時点で161カ所に上る。このアイデアが素晴らしいのは、既存のインフラを活用し、費用対効果も高く、多くの人の利用が可能な点だ。
自然災害対策の最優先課題は、被害をできる限り小さくする「減災」であるということが国民に浸透してきている証しでもある。
一方、洪水や土砂災害など水害への備えも重要だ。大都市圏ではヒートアイランド現象の影響もあって局地的豪雨が頻発する傾向にあり、河川の洪水や地下街への浸水が懸念される。またここ20年ほど、全国各地で以前には想定しにくかった土砂災害が起きている。
昨年8月、広島市北部の住宅地を襲った大規模な土砂災害では死者が75人に達した。被害拡大の背景には、大量の雨量もさることながら、土石流の恐れがある区域への自治体の対策が不十分だったことがある。日頃からの自治体と住民の防災意識の共有、備えの重要性を改めて確認したい。
今年は8年ぶりに二つの台風が同時発生した。地球温暖化の影響で近い将来、異常気象が今まで以上に顕著となり、台風が大型化するという専門家の指摘もある。要注意だ。
自衛隊出動が迅速に
発生から20年を迎えた阪神・淡路大震災の時と比べ、大きく変化したのは、救援、救護のための自衛隊出動が迅速、的確になったことだ。国のリーダーや自治体首長らの意識改革が進み、危機管理体制の整備が行われた結果である。
しかし、これも普段の国民の自助努力の上に、その成果が表れるということを肝に銘じなければならない。
(9月1日付社説)