辺野古移設、米軍の抑止力維持に不可欠


 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐり、政府と沖縄県の集中協議が行われている。

 中国や北朝鮮の脅威が高まる中、政府は辺野古移設が米軍の抑止力維持に不可欠であることを県側に丁寧に説明すべきだ。

 官房長官と知事が会談

 那覇市で行われた菅義偉官房長官と翁長雄志知事との会談では、菅長官が辺野古移設への理解を求めたのに対し、翁長知事は、県が戦後に置かれた状況を振り返りながら反対する考えを重ねて示した。

 集中協議で菅長官が沖縄入りして翁長知事と会談するのは2回目だ。政府は沖縄に寄り添う姿勢を示すことで、歩み寄りの糸口を探る狙いがあるが、溝は埋まっていない。

 政府は集中協議のため、9月9日までの1カ月間、移設作業を中断した。県によるサンゴの破損状況調査が延期されたため、菅長官は中断期間を延長する可能性にも言及している。会談後には「集中協議はまだ残されているので、懸命に努力して理解を求める」と述べた。

 一方、翁長知事は集中協議が不調に終わった場合には「ありとあらゆる手段で辺野古に基地を造らせない」と述べ、辺野古沖の埋め立て承認取り消しを念頭に政府側を牽制(けんせい)した。だが、辺野古移設が普天間問題の唯一の解決策であることに変わりはない。

 普天間飛行場は住宅密集地に立地し、「世界一危険な米軍基地」と言われる。2004年には、隣接する沖縄国際大に米軍ヘリコプターが墜落する事故が発生している。普天間の危険性除去が急務であることに異論はないだろう。

 翁長知事は普天間飛行場の県外・国外移設を求めている。しかし沖縄は地政学上の要衝であり、米軍の抑止力を維持するには辺野古移設が最も現実的な選択だ。中国や北朝鮮の脅威が高まる中、在沖縄米軍の重要性は増している。

 この問題で、翁長知事は感情的な発言を繰り返してきた。今年4月には「環境や住民生活に配慮しながら工事を粛々と進めている」と述べた菅長官に対して「上から目線の『粛々』という言葉を使えば使うほど、県民の心は離れ、怒りは増幅する」と批判。安倍晋三首相との会談でも「沖縄は自ら基地を提供したことは一度もない。土地を奪っておきながら、嫌なら代替案を出せと言われる。こんな理不尽なことはない」と述べた。

 沖縄の基地負担の大きさは理解する。政府は負担軽減に全力を挙げる必要があろう。だが、翁長知事は日本を取り巻く安全保障環境の厳しさを十分に認識していないのではないか。

 戦後の複雑な歴史があるとはいえ、本土と沖縄の関係を対立的にとらえることも問題だ。沖縄は当然、日本の一部であり、日米安保体制は沖縄を守るためのものでもある。

 沖縄への十分な配慮を

 政府は県側の要望を踏まえ、2016年度予算概算要求で3000億円を超える沖縄振興費を計上することも決めた。政府は沖縄に十分に配慮した上で、辺野古移設について理解を求めるべきだ。

(8月30日付社説)