海の日、資源管理・水域保全の強化を
きょうは「海の日」。全国で海をめぐる様々な催しが行われ、海洋レジャーを楽しむ人も多いだろう。国民生活と密接な関わりを持つ海だが、同時に日本国の存立そのものに直結していることを忘れてはならない。
当たり前ではない恩恵
四方を海に囲まれたわが国は、海から多くの恩恵を受けている。豊富な水産資源は生物多様性の面でも群を抜いている。海外に依存するエネルギー資源や食料の殆どは海を渡って運ばれてくる。自動車や電気製品など日本で作られた工業製品も海を通じて輸出される。
何より海は、わが国の安全を守る上で、天然の防壁としての役割を果たしている。こうした恩恵をわれわれ日本人は、これまで当たり前のことのように捉える傾向があった。だが近年、状況は大きく変わりつつある。
これまで、無尽蔵のように錯覚されてきた水産資源が大きく減少している。2013年の日本全体の養殖を除く水揚げ量は376万㌧と、ピーク時(1984年)の3分の1まで減少している。ニホンウナギや太平洋クロマグロなどは絶滅が危惧されるまでに至っている。
養殖に使うニホンウナギの稚魚(シラスウナギ)の乱獲など、厳しく取り締まるのはもちろんだ。その他、これまで豊富とされていたマサバなどについても、資源管理を強化する必要がある。漁獲可能量を漁船ごとに割り当て管理する「個別割り当て(IQ)方式」が試験的に導入されているが、他の魚種にも適用すべきだ。
わが国は世界第6位の排他的経済水域(EEZ)を有する。そこには、コバルト・リッチ・クラストや海底熱水鉱床などの豊富な鉱物資源が存在し、これから開発・利用に取り組もうとしている。そのためには技術的・経済的な課題もあるが、それら海域の主権的権利を守ることが前提になる。
昨年10月から12月にかけて小笠原諸島の周辺の領海やEEZ内で起きた中国漁船によるサンゴ密漁事件は、わが国の取り締まり体制が不十分であることを痛感させた。資源保護のためにわが国が漁獲を規制していた海域で、中国の密漁船は根こそぎサンゴを乱獲し、環境に大きなダメージを与えた。
水産庁は8月、被害にあった海域を詳しく調査し、そのデータを中国側に突きつけて取り締まり強化を促す考えだ。それとともに外国の無法行為を断固阻止し取り締まる体制づくりを国を挙げて進める必要がある。
強引な海洋進出を続ける中国は、南シナ海で南沙諸島の岩礁埋め立て、軍事基地建設という挙に出ている。この海域近くには、わが国の生命線であるシーレーンがある。中国は沖縄県・尖閣諸島周辺でも領海侵犯やEEZ内での海洋調査を行い、東シナ海の日中中間線付近で新たな施設を建設している。これを放置することはできない。
主権守る体制づくり急げ
元寇を挙げるまでもなく、歴史的にわが国は海によって守られてきた。しかし、これからは海を守るためもっと力を注ぐべきだ。海洋主権を守る毅然とした姿勢と、万全の体制づくりが急がれる。
(7月20付社説)