地球温暖化、抑制に向けた議論主導を
政府は温室効果ガス排出量を2030年までに13年比26%(05年比25・4%)削減する新目標を正式決定した。
安倍晋三首相は「国際的に遜色ない野心的な目標だ。全ての国が参加する公平で実効的な枠組みを構築できるよう、政府を挙げて取り組む」と述べた。地球温暖化の抑制に向け、国際的な議論を主導してほしい。
温室ガス削減目標を決定
26%のうち21・9%は再生可能エネルギーや原発の活用、省エネルギーの推進、4・9%は森林整備や代替フロン対策によって削減する。
省エネ分野は、ハイブリッド車の普及率を現在の3%から29%に、発光ダイオード(LED)など高効率照明の普及率を現状の9%からほぼ100%にそれぞれ引き上げることなどが前提となる。目標達成には、省エネを促す税制や補助金制度などの創設が求められよう。
原発の活用も重要だ。政府は30年度の最適な電源構成(ベストミックス)で、原発比率を20~22%としている。二酸化炭素(CO2)を排出しない原発は温暖化対策でも重要な役割を果たすとの考えからだが、ベストミックスを実現するには、原発の再稼働はもちろん、新増設や建て替えが必要となる。
九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)では今月、原子炉に核燃料が搬入された。来月中旬にも再稼働される見通しだ。四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)についても、新規制基準に適合すると認めた審査書が正式決定された。決定は再稼働の前提となるものだ。
もっとも、これらの原発の安全審査が申請されたのは13年7月だ。仮に川内が来月に再稼働したとしても、申請から2年以上経過したことになる。審査期間は当初、半年程度とされていた。温暖化対策のためにも、原子力規制委員会には効率的な審査を求めたい。
今年末にパリで開かれる国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)では、20年以降の温暖化対策の新たな国際枠組みに合意する予定だ。
各国はCOP21に先立ち、温室ガス削減目標の提出を求められている。すでに米国が25年までに05年比26~28%減、欧州連合(EU)が30年までに1990年比40%減とすることを決定している。
一方、世界最大の排出国である中国は6月末、国内総生産(GDP)当たりのCO2を30年までに05年比60~65%減とすることを打ち出した。しかし、この目標ではGDPが拡大すればCO2排出量を増やしても構わないことになる。
中国は温室ガスを排出して経済発展を遂げた先進国の責任を追及してきた。しかし中国の排出量は全世界の4分の1に上っており、このまま増やし続ければ温暖化を抑制することはできない。
環境技術でも貢献を
温暖化に伴う異常気象で、途上国では多くの犠牲者が出ている。貧困が拡大し、紛争が増える恐れがあるとの指摘もある。対策は待ったなしの状況だ。日本は国際枠組み構築とともに優れた環境技術の面でも貢献が求められる。
(7月19日付社説)