日韓国交50年、首脳会談で関係改善に道筋を
日韓両国は50年前のきょう、「日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約(日韓基本条約)」に調印し、国交正常化を果たした。本来であれば盛大に祝うところだが、残念なことに現在の両国関係はかつてなく悪化している。事態打開へ政治的決断が必要な時だ。
否定できない実績も
日本による植民地支配に対する恨みが根強かった韓国の国民感情などで、条約締結は難航を極めたが、未来志向の朴正熙政権が登場し、交渉に弾みが付いた。朴氏は国交正常化が「100年後よかったと思える」決断との認識を日本側に伝えていたことが後に分かっている。
終戦後、日韓間には歴史認識、竹島領有と周辺海域の漁業権、戦後補償など双方の溝を埋めるために解決すべき懸案が山積していた。しかし、互いに国交正常化を必要としたより本質的な理由は別のところにあったことを想起したい。
世界は米ソ冷戦時代に突入し、南北分断が固定化した韓半島では当時、北朝鮮が国力で韓国を上回り、日本としては半島全体が共産主義化されることを真剣に危惧しなければならなかった。韓国との国交正常化は安全保障上、極めて重要な選択だったと言える。
一方、最貧国だった韓国は近代化の足場を築く必要に迫られていた。基本条約に付随する経済協力協定で韓国は日本から「無償3億㌦、有償2億㌦、民間借款3億㌦」の支援を受け、国内のダムや高速道路などインフラを整備し、「漢江の奇跡」を成し遂げた。
日韓には不幸な過去があり、「棚上げすることで解決」してきた課題が残っている。だが、日米韓3カ国の安保連携を土台にした経済的繁栄、民主主義と市場経済という共通の価値観に基づき民間レベルを中心に築いた絆は、否定できない50年の実績だ。
国交正常化後では最悪とも言われる近年の日韓関係は、2012年の李明博大統領による竹島上陸と天皇陛下に対する謝罪要求などがきっかけとなった日本側の対韓感情悪化が特徴だ。いわゆる従軍慰安婦問題でこれまで以上の行動を求め続ける朴槿恵大統領の硬直した外交姿勢も日本側を戸惑わせている。
韓国側は安倍晋三政権による集団的自衛権の行使容認などを「右傾化」と受け止め、関係悪化は日本の変化が原因との認識だ。日韓とも自己主張が先行し、譲歩しづらい状態だ。
安倍首相も朴大統領も国内の事情や世論を優先させ、これ以上「嫌韓」「反日」を放置するのは賢明ではない。関係改善を願う国民の方が圧倒的に多いという事実と向き合うべきだ。そのためには両首脳になってまだ一度も開かれていない首脳会談が必要だとする声も多い。
両首脳が記念行事出席
尹炳世韓国外相が朴政権の外相として初めて訪日し岸田文雄外相と会談すると同時に、50周年のきょう、安倍首相が東京で開かれる記念行事に、朴大統領もソウルでの記念行事に出席することが電撃的に発表された。関係改善に向け久しぶりに高まる機運を首脳会談実現にぜひつなげてもらいたい。
(7月22日付社説)