G7の結束で温暖化対策の新枠組み決定を
ドイツで開かれた先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)は首脳宣言に、国際社会が世界の温室効果ガス排出量を2050年までに10年比最大70%削減する長期目標を共有することを「支持する」と明記した。G7が地球温暖化抑制への強い決意を示したことを歓迎したい。
削減目標が出そろう
国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は昨年11月に公表した報告書で、現状のまま排出が続くと、今世紀末の平均気温は20世紀末と比べ最大4・8度上がると予測。洪水や干ばつなどの影響で貧困が拡大し、紛争が増える恐れがあると警告した。
そして産業革命前と比べた平均気温上昇を2度未満に抑えるには、温室ガス排出量を50年までに10年比40~70%削減することが必要と訴えた。この目標について、首脳宣言では「上方の削減(70%)とする」とした。
温暖化に伴う異常気象で、アジアの途上国などでは多くの犠牲者が出たり、農作物に大きな被害が生じたりしている。南太平洋の島嶼国からは海面上昇を懸念する切実な声が上がっている。G7が結束して温暖化に歯止めを掛ける姿勢を示したことの意義は大きい。
しかし、この目標をG7だけで達成することはできない。経済成長で排出量が急増している中国やインドなど新興国の協力が不可欠だ。
現行の温暖化対策の枠組みである京都議定書は、先進国のみに排出削減を義務付け、中国やインドには削減義務がない。このため、20年以降の新たな枠組みを作る議論が進んでいる。
安倍晋三首相はサミットで、日本の温室ガス排出量を30年までに13年比で26%削減する目標案を表明した。これでG7の削減目標が出そろった。
先進国は温暖化対策に関して、協調して交渉に臨む構えだ。年末の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)の場で、何としても新枠組みを決定しなければならない。
今後は途上国の対応が注目される。新枠組みの国際交渉では、途上国に削減に向け大きな役割を担ってほしいと考える先進国側と、温室ガスを排出して経済発展を遂げた先進国の「歴史的責任」を追及する途上国側の対立が続いている。
だが特に危機感の強い島嶼国は、こうした対立に苛立ちを強めている。サミットの首脳宣言では、途上国の温暖化対策のために20年までに官民合わせて年間1000億㌦を支出することを再確認した。途上国も重い腰を上げて対策に取り組むことが求められる。
一方、日本の目標達成には、ハイブリッド車の普及率を現在の3%から29%に、発光ダイオード(LED)など高効率照明を現状の9%からほぼ100%に引き上げることが欠かせない。さらに、この目標は運転中に温室ガスを出さない原発や再生可能エネルギーの活用を前提としている。
原発の活用が必要だ
もっとも再生エネの発電コストは割高で、利用拡大は企業や家計の負担を増すことになる。温暖化対策には原発を使用する必要がある。
(6月13日付社説)