島サミット、きめ細かい支援で関係強化を


 福島県いわき市で開かれた第7回太平洋・島サミットは、海洋での国際法の順守や国際紛争の平和的解決などを明記した「福島・いわき宣言」を採択して閉幕した。この地域では近年、中国が影響力を増している。太平洋を平和で豊かな海とするため、島嶼(とうしょ)国とのさらなる関係強化を進める必要がある。

 「太平洋市民社会」を提唱

 同サミットは3年に1回開かれ、今年は共同議長国を務めたパラオなど太平洋島嶼国14カ国とオーストラリア、ニュージーランドの計17カ国が参加した。基調演説で安倍晋三首相は、民主主義や法の支配など普遍的価値を共有する「太平洋市民社会」を確立するよう提唱するとともに、中国を念頭に「力による威嚇や力の行使とは無縁の関係」構築を訴えた。

 首相はまた、島嶼国の災害対策支援として、今後3年間で550億円以上拠出することを表明。災害や気候変動の脅威に対応するため約4000人を育成する考えも表明した。

 太平洋の島嶼国は国土こそ狭いが、広い排他的経済水域(EEZ)を有し、水産資源や海底鉱物資源が豊富で、日本や米国、豪州以外に、最近は中国、ロシア、韓国などの国々も関係強化を図っている。

 中でも中国は、インフラ整備など支援を急速に強化。昨年9月まで軍事政権が8年間続いたフィジーやパプアニューギニアなどで存在感を増している。巨大経済圏の「21世紀海上シルクロード」構築の一環とみられる。中国は太平洋地域で米国への軍事・外交面での対抗姿勢も強めている。

 そういう中で今回、採択された「福島・いわき宣言」では、「武力による威嚇、武力の行使に訴えることなく、国際紛争を平和的に解決する重要性」が強調された。名指しはしないものの、一方的な海洋進出で周辺諸国との摩擦を強める中国を念頭に置いたものだ。

 同宣言には、常任・非常任の議席拡大を含めた国連安全保障理事会の改革や、戦後日本の太平洋地域の安定確保への取り組みと「積極的平和主義」を支持する文言も入った。

 また、昨年民政復帰したフィジーが9年ぶりでサミットに参加したことも小さくない成果だ。島嶼国が日本に期待するところは小さくない。

 わが国が、太平洋島嶼国との関係を重視するのは、安全保障、資源、歴史的な関係などのためだが、国連外交で今後もこれらの国々から支持を受けるためには、同じ島嶼国ゆえの協力・連携という基本を忘れてはならないだろう。

 それぞれの島嶼国には共通の課題がある。とりわけ気候変動問題では、国家水没の危機という切迫した事情を抱える国もある。技術やノウハウを持つ日本は、その窮状に対し支援を惜しむべきではない。

 民間交流も活発にしたい

 今後、資金力を頼みに影響力の増大を狙う中国に対抗していくためにも、気候変動以外の様々な分野での交流も進め、きめの細かい支援をする必要があるだろう。民間の交流・協力もさらに活発化させることが求められる。

(5月27日付社説)