中国人工島、日米は哨戒協力で牽制せよ
米国防総省は沖縄県の嘉手納基地に配備されている海軍最新鋭のP8哨戒機が、南シナ海で偵察活動を行う映像を公開した。同海域で埋め立てを進め、人工島に軍事施設を増設するなど、中国の軍事拡張の実態の一部が世界に映し出された。
米国防総省が映像公開
映像では、中国側が米哨戒機に「われわれの軍事区域に接近している。速やかに退去しなさい」と警告し、米側が「われわれは公海の上空で、国際法に基づいて活動している」と応酬するなど、米中間の緊迫した瞬間が明らかにされた。
今回の映像公開は、領有権を主張する中国を牽制(けんせい)する狙いがあるばかりでなく、次のステップを検討しているシグナルとみられ、今後の米海軍の動きを注視しなければならない。
米メディアはすでに、南沙(英語名スプラトリー)諸島の人工島の近くに、カーター米国防長官が米海軍の偵察機や艦船を送る案を検討するよう指示したと報じている。米国防総省のウォレン報道部長は「領海」に当たる人工島から12カイリ以内に米軍機を飛ばす可能性について「次のステップになる」と述べた。
当然のことながら米側は、人工島を中国の主権が及ぶ領土として認めていない。12カイリ以内で航空機や艦船などを使って対抗措置を取り、中国の領有権の主張に反対する姿勢を明示する意図がある。
日本は同海域の領有権問題の係争国ではないが、地域の安定のために今後、何らかの関与が強く求められよう。またそれにどう応えるかが課題である。
米海軍のロバート・トーマス第7艦隊司令官は、自衛隊が哨戒活動を南シナ海にまで広げることに期待を示す発言をしている。日本は独自に開発した初の国産哨戒機P1の配備を始め、海の警戒・監視能力を高めようとしている。P1は航続距離が従来のP3Cの2倍の8000㌔に伸び、南シナ海へのパトロールも可能になる。
自衛隊と米軍の役割分担を定めた「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」の再改定で、日米両政府は平時からの警戒監視や情報収集で協力することを明記した。これまで東シナ海までだった日本の役割が拡大することになる。
今後は米軍と自衛隊が警戒監視に当たることで、南シナ海を自国の領海として囲い込もうとする中国ににらみを利かせる必要がある。この海域における日米両軍のプレゼンスは高まろう。トーマス司令官は「南シナ海の同盟国、盟友国は、同海域を安定させる機能として、ますます日本に期待するようになるだろう」と指摘している。
ケリー米国務長官は先日の訪中で、南シナ海での埋め立てを中止するよう求めた。だが、中国の王毅外相は「中国の決意は強固で揺るぎないものだ」と述べ、習近平国家主席は「広い太平洋は米中両国を収容できる空間がある」と語るなど、問題をはぐらかした。
オバマ政権は躊躇するな
中国に明確な行動で反対の意思を示すべきだとの機運が、米国内で高まっている。アジア太平洋を重視するオバマ政権は決して躊躇(ちゅうちょ)してはいけない。
(5月26日付社説)