宮古島陸自配備、中国への抑止力を高めよ


 中国軍の艦艇や航空機が沖縄本島と宮古島の間を通過し、太平洋への進出を活発化させる中、沖縄本島より西側は自衛隊の実働部隊が配置されていない「空白地帯」となっている。

 解消される「空白地帯」

 このような状態を解消するため、左藤章防衛副大臣は沖縄県宮古島市の下地敏彦市長を訪問し、陸上自衛隊の警備部隊を配備する方針を伝えて受け入れを要請。艦艇と航空機に対処するための地対艦ミサイル、地対空ミサイルの部隊も含め、約800人規模となることを明らかにした。

 左藤副大臣は沖縄県石垣市も訪れ、中山義隆市長に石垣島への部隊配置に向けた調査に着手する方針を伝えた。

 これに対し、下地市長は「十分に理解できる」とし、「市議会に報告し、しっかり議論してもらう」などと述べた。中山市長も「安全保障は政府の専権事項」だとして、協力する意向を示した。

 すでに沖縄県の与那国島に沿岸監視隊が、鹿児島県の奄美大島に警備部隊の配備が決まっている。宮古島と石垣島への陸自配備が実現すれば、中国軍に対する抑止効果が一段と高まることになる。

 実際、沖縄本島と宮古島の間の海峡は、中国にとって重要な太平洋への出口であり、戦略的要衝となっている。この地域に地対艦ミサイル、地対空ミサイルを装備した警備部隊を配備することの意義は非常に大きい。

 今回の方針は国内外に離島防衛への確固たる意志を示すことにも繋(つな)がる。

 配備される警備部隊は有事の際、初動対応を担当して沿岸・離島防衛の任務に就くことになる。地対艦ミサイルは88式地対艦ミサイルが配備される予定で、沿岸から約150㌔離れた水上艦艇を撃破することができる。地対空ミサイルは03式中距離地対空ミサイル、11式短距離地対空ミサイルなどの配備が検討されている。

 離島防衛については、4月下旬に決定した新たな日米防衛協力の指針(ガイドライン)にも明記された。

 宮古島に隣接する下地島には3000㍍級の滑走路を持つ下地島空港がある。

 この空港に、過密な那覇空港に配備されている航空自衛隊の戦闘機部隊および海上自衛隊の哨戒機部隊を分散配備することも、次の段階では検討すべきであろう。自衛隊が導入を決定したオスプレイについても同様である。

 丁寧な説明が必要だ

 佐藤副大臣は「陸自部隊の配備により、宮古島への攻撃に対する抑止力を高め、災害時の救援で自衛隊が迅速に対応できるようになる」とメリットを強調した。

 今後、政府は住民の理解を得るための丁寧な説明が大事になってくる。「自衛隊が配備されれば、中国軍の攻撃対象となる」といった誤った認識を払拭(ふっしょく)する必要もあるだろう。その際に経済効果や人口減の対策に繋がることにも触れるべきである。

 宮古島が難航すれば、石垣島への配備も難しくなる。そのことを政府は肝に銘じなければならない。
(5月17日付社説)