特定機能病院、高度医療の安全管理徹底を
患者が相次いで死亡した東京女子医大病院(東京都新宿区)と群馬大医学部付属病院(前橋市)について、厚生労働省の医療分科会は安全管理体制に問題があるとして、高度医療を提供する「特定機能病院」の承認取り消しが相当とする意見書を全会一致でまとめた。厚労省は5月中に取り消しを正式決定する方針だ。
2病院が承認取り消し
特定機能病院は高度医療のための能力があるとして、医療法に基づき国の承認を受けた病院だ。1992年に制度が創設され、大学病院を中心に全国86施設ある。要件は①病床数400床以上②専門医が配置基準の半数以上③安全管理体制の確保――などで、診療報酬の優遇を受けられる。
女子医大病院では人工呼吸中の小児への使用が禁じられた鎮静剤「プロポフォール」を投与された子供が相次いで死亡。群馬大病院では肝臓の腹腔(ふくくう)鏡手術を受けた患者8人が死亡した。
分科会は、女子医大病院について、禁忌薬の理解不足など医薬品の安全管理体制が確保されておらず、情報共有も不十分などと指摘。群馬大病院については、事故が起きた際の院内報告制度が機能しておらず、調査報告書の作成過程にも問題があったなどとした。
女子医大病院では2013年までの6年間に、プロポフォールによる死亡例が続いていたにもかかわらず、14年に同じ薬の大量投与で男児の死亡事故が起きた。群馬大病院の手術は同じ執刀医によるもので、最初の患者が死亡してから3年以上、医療スタッフは病院長ら幹部に死亡例が続いているという事実を報告していなかった。承認取り消しは当然だ。
中でも、02年に続き2回目の取り消しとなった女子医大病院の責任は極めて重い。最初の取り消しは、心臓手術のミスでカルテを改竄(かいざん)したことによるものだった。再承認された07年、院長に権限を集中し事故報告を徹底させる改善策を掲げたが、新たな事故を防げなかった。
医療機関は何よりも患者の安全確保を最優先すべきだ。特定機能病院は特にそれが求められよう。患者の信頼を2度にわたって損なったことは到底許されるものではない。
再承認を行った国の責任も問われる。厚労省は承認に際して現地を調査し、その後も年1回の立ち入り検査を行うことになっている。だが、審査が形骸化しているとの指摘もある。厚労省は全国の特定機能病院に集中的な立ち入り検査を実施し、承認要件も厳しく見直す方針だ。再発防止のため、実効性のある対策を講じなければならない。
体制の入念な点検を
05年に承認を取り消された東京医科大病院では、入院患者が約1割減ったほか、先進医療が認められにくくなったり他病院との共同研究ができなくなったりしたため、病院への就職希望者も減少したという。09年に再承認されたものの、信頼回復は並大抵のことではない。
高度な医療を提供するのであれば、それだけの安全管理が求められる。全ての特定機能病院は管理体制を入念に点検してほしい。
(5月6日付社説)