温室ガス削減、原発再稼働が欠かせない
政府は2030年の温室効果ガス排出量を13年比26%減(05年比25・4%減)とする目標の原案を公表した。
今後、与党内の調整などを経て目標を決定し、6月上旬にドイツで開かれる主要国首脳会議(サミット)で安倍晋三首相が表明する。
電源構成案に基づく目標
原案は、原子力20~22%、再生可能エネルギー22~24%、火力56%程度という30年時点の最適な電源構成(ベストミックス)案に基づくものだ。
二酸化炭素(CO2)を排出しない再生エネの導入拡大や原発の活用などを通じて21・9%削減。さらに空調や冷蔵庫などで用いる代替フロンの排出抑制策を進めることで1・5%、森林などがCO2を吸収する分で2・6%それぞれ上積みし、「26%減」の水準に到達させる。
工場などの産業部門の削減率は6・5%減の一方、オフィスや家庭で約4割、運輸部門で3割弱の削減を見込む。電気自動車など次世代車の普及率を50%(現状3%)に引き上げ、ほぼ全ての家庭用照明をLED化する想定だ。
地球温暖化対策は、年末にパリで開かれる国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で大きな節目を迎える。各国はCOP21で、京都議定書に代わる温室効果ガス削減の新たな国際枠組みへの合意を目指している。
京都議定書は先進国だけに削減義務を課しているが、中国など途上国の排出量が急増する中、実効性に乏しいとの批判が強い。新枠組みは全ての国の参加を予定しており、各国が自主的な目標を条約事務局に提出して削減に取り組む。
既に米国が「25年までに05年比26~28%減」、欧州連合(EU)が「30年までに1990年比40%減」との目標を提示している。日本の目標は欧米に見劣りしないものだ。
新枠組みの国際交渉では、途上国に削減に向け大きな役割を担ってほしいと考える先進国側と、温室ガスを排出して経済発展を遂げた先進国の「歴史的責任」を追及する途上国側の対立が続く。先進国は削減への強い決意を示すことで、途上国に積極的な取り組みを促していく必要がある。
(5月4日付社説)
日本は20年までの削減目標を「05年比3・8%減」としている。これは90年比では約3%増となるため、国際社会から批判を浴びた。
こうした目標となったのは、東京電力福島第1原発事故の影響で国内の全ての原発が停止し、火力発電による石炭消費量が増えたことが大きな要因だ。13年度の国内の温室ガス排出量はCO2換算で14億800万㌧に上り、過去2番目の高水準となった。温暖化対策を強化するには、安全が確認された原発の再稼働が欠かせない。
新増設の方針明示を
運転期間の上限(40年)を迎える原発が全て廃炉になれば、30年時点で総発電量に占める比率は約15%となる。
20~22%という電源構成案を実現するには、運転期間の延長や新増設、建て替えなどが必要となる。政府は新増設の方針を明確に示すべきだ。
(5月4日付社説)