首相米議会演説、世界に貢献する同盟強化を


  安倍晋三首相は米議会上下両院合同会議で演説を行った。英語で45分間にわたって語られ、題名「希望の同盟へ」が示すように、戦後70年を踏まえた上で未来志向の考えを前面に押し出すものとなった。

 満席の会場からは聴衆らが立ち上がって拍手を送る場面が10回以上あり、首相のメッセージは米側に好意的に受け止められたと言える。

未来志向の画期的内容

 演説では、先の大戦への「痛切な反省」に言及し、アジアの国民に苦しみを与えた事実から目を背けてはならないと述べた。同時に米国人の犠牲者に哀悼を捧げ、かつて敵対した日米両国が和解に至ったことを強調、日米同盟のさらなる発展が世界の平和と安定に貢献するとの考えを示した。

 日本の首相による米議会演説は、日米安保条約改定後の1961年、池田勇人首相が下院で行って以来54年ぶりであった。上下両院合同会議での演説は歴代首相で初となる。合同会議は米大統領の一般教書演説など特別な機会に開かれる。

 過去いずれの演説も歓迎式典行事の一環であったが、今回の演説は戦後70年の日米両国の歩みを踏まえ、日米同盟の重要性を米国民に直接訴え、親密な日米関係を世界に発信する絶好の機会となった。70年前の過去よりも現在までの70年間の歩み、さらには未来を見詰めた画期的なものとして評価してよい。

 安全保障面では、アジア太平洋を重視する米国のリバランス(再均衡)を「徹頭徹尾支持する」と明言。強圧的に海洋進出を図る中国を念頭に①国家が何か主張をする時は国際法に基づいてなすこと②武力や威嚇は自己の主張のため用いないこと③紛争の解決はあくまで平和的手段によること――という三つの原則を強調した上で「太平洋から、インド洋にかけての広い海を、自由で、法の支配が貫徹する平和の海にしなければならない」と述べた。

 また、集団的自衛権の行使を含む安保関連法案を夏までに成立させると公約して「戦後初めての大改革である」と語った。日米ガイドラインの再改定にも触れたが、日本の役割を広く米国民に知ってもらう上で、極めて有効であった。

 さらに、12カ国が参加する環太平洋連携協定(TPP)交渉の合意を目指し、米国と歩調を合わせてリーダーシップをとる決意を示した。自由貿易を通じて市場開放と経済成長に取り組むことが日米経済関係のさらなる拡充につながるからだが、それのみならず、「長期的な、安全保障上の大きな意義がある」ことを強調した。

 首相は「国際協調に基づく、積極的平和主義」が日本の将来を導く旗印となることを謳(うた)い上げた。今後も一層の国際貢献が求められよう。そして「米国と日本、力をあわせ、世界をもっとはるかに良い場所にしていこうではありませんか。希望の同盟――。一緒でなら、きっとできます」と結んだ。

国内でも丁寧に説明を

 演説の内容を日本国内でも丁寧に説明して国民の理解を得た上で、着実に実行していくことが望まれる。

(5月2日付社説)