G7外相会合、対中結束の意義は大きい


 ドイツで開かれていた日米欧とカナダの主要7カ国(G7)外相会議では、海洋進出を強める中国を念頭に「威嚇に反対する」との警告を発した。G7が結束して海洋の安全保障で対中圧力を強める意思を明確にしたのは初めてだ。

 「海洋安保宣言」を発表

 会議の主要テーマは、ロシアの領土拡張や中国の海洋進出など、冷戦後の国際秩序を乱す試みにどう対処するかであった。共同声明とは別に「海洋安全保障に関する外相宣言」が発表された。

 宣言では名指しこそ避けたが、東シナ海や南シナ海での中国の海洋進出について「威嚇や強制、力によって領土や海洋に関する権利を主張しようとするいかなる試みにも反対する」と明記した。南シナ海の係争地域での大規模な岩礁の埋め立てと飛行場建設、東シナ海の沖縄県・尖閣諸島周辺での領海侵入などの行動に対して強い警告を発したものである。

 このような宣言を出した背景には、G7を中核とする自由諸国が、自由な経済活動に海洋の自由航行と安全の確保が不可欠であり、各国が協調して海洋権益を擁護すべきだと考えていることがあろう。外務省幹部は「ギリギリまで日本の考えが反映されるように働きかけた」としているが、日本を支援したのは議長国のドイツだった。

 ドイツも日本と同じく貿易立国だ。自動車などの輸出が経済を支えており、法の支配などの価値観を日本と共有している。G7が自由貿易擁護で結束した意義は大きい。

 さらに共同声明では日本の主張をいれて北朝鮮問題にも言及し、日本人拉致問題を含む人権侵害に直ちに対処するよう北朝鮮に求めた。日本の対北外交をG7が後押ししたものとして評価されよう。

 中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を英仏独伊の4カ国が決め、G7の足並みの乱れが指摘されている折でもあった。欧州の経済界は中国の巨大な市場に熱い視線を注いでいるが、力を背景として傍若無人な海洋進出を続けることへの警戒心も強い。

 米太平洋艦隊司令官は「中国は砂の万里の長城を築いている」と批判したが、南シナ海での岩礁埋め立てによるサンゴ礁の損失など周辺諸国の対中不満が高まっている。

 議長声明は「民主主義、法の支配、人権尊重の原則に則し、自由と平和、領土の一体性を守り、テロなどの脅威に連携して行動する」とうたった。対中国で結束を再確認した根拠がG7の共通の価値観であることをわれわれは忘れてはならない。

 AIIBについては議題の一つとして取り上げられたが、岸田文雄外相は参加に慎重な日本の立場を説明した。わが国の最大の懸念材料は公正な統治を確保できるかだが、G7でそれに関する情報の共有などで連携していくことで一致した。

 サミットに役立てよ

 いずれにせよ、日本はG7のアジアからの唯一の出席国であり、今回の外相会合では存在感を示せたと言える。日本で開かれる来年のG7サミットに役立つことを期待したい。

(4月21日付社説)