バンドン会議60年、平和貢献への決意を示せ
安倍晋三首相は、アジア・アフリカ会議(バンドン会議)60周年記念首脳会議に出席し、演説を行う。
戦後70年の節目に、平和国家としてアジア・アフリカを支援してきた実績を強調するとともに、今後もこれらの地域の平和と繁栄に貢献していく決意を示してほしい。
第三世界の存在示す
バンドン会議は第2次世界大戦終結の10年後、1955年4月にインドネシア・ジャワ島西部のバンドンで、スカルノ大統領、インドのネール首相、中国の周恩来首相、エジプトのナセル大統領らが中心となって開催された。
アジア・アフリカの有色人種国の代表による初の国際会議で、東西冷戦下で第三世界の存在を世界に示した。会議で宣言された平和10原則は第三世界の非同盟運動を方向付け、旧植民地の独立、新興諸国の結束による世界の民族解放運動にも影響を与えた。
2005年には50周年記念会議がインドネシアの首都ジャカルタとバンドンで開かれた。今回も4月22~23日にジャカルタで首脳会議、24日にバンドンで記念式典が行われる。50周年の際には、民族自決や多元主義を確認する「新アジア・アフリカ戦略的パートナーシップ宣言」が採択された。
60周年会議には70カ国以上の代表が出席する。会議のテーマは「世界の平和と繁栄を推進するための南南協力」で、閉幕時にはアジアとアフリカの経済協力、「イスラム国」などの過激主義やテロへの対処に向けた努力、疾病対策を含む貧困や格差是正に向けた協力を盛り込んだ「バンドン・メッセージ」が発表される。
また、両地域の協力を具体的に促進するための定例会合実施などに触れた「戦略的パートナーシップ宣言」のほか、パレスチナの権利や独立国家樹立への支援を明記した文書も別個に採択される。
安倍首相は22日に各国首脳らを前に演説するほか、個別の首脳会談に臨み、戦後日本の平和国家としての歩みを訴える。中国の習近平国家主席や北朝鮮の金永南・最高人民会議常任委員長らとの正式な会談の予定はないが、非公式な接触があるかが焦点だ。
演説では、アジア諸国などと和解してきた戦後日本の歩みを振り返り、発展途上国の開発・民主化支援などに力を注いできたこともアピール。自らが掲げる積極的平和主義に基づく外交方針を説明する。
このような演説の内容は今夏の戦後70年談話にもつながるとみられ、中国や韓国も注目している。安倍首相は先の大戦への反省を表明するものの、「侵略」や「おわび」には言及しない方向だ。
真意が伝わる演説を
一番大切なことは、過去に真摯(しんし)に向き合った上で未来志向を強調することである。
もっとも、歴史認識問題で近隣諸国への一定の配慮は必要だろう。安倍首相は歴代内閣の歴史認識を「全体として引き継ぐ」と述べている。決して過去を軽視するのではないという真意が伝わる演説をすべきだ。
(4月20付社説)