日米防衛協力、地域での影響力を高めよ


 日米両政府は、自衛隊と米軍の役割分担を定めた防衛協力の指針(ガイドライン)を安倍晋三首相が訪米する今月下旬に再改定する方向だ。

 東シナ海や南シナ海における中国の一方的な進出を念頭に、日米両国が地域での影響力を高めるためのものとしなければならない。

 海洋進出強める中国

 再改定後の新たなガイドラインは、自衛隊の活動に地理的制約をなくし、米軍支援の範囲や内容を拡大する。自衛隊がガイドラインに沿って活動するには、その法的根拠となる安全保障法制の整備が必要となる。

 中国は沖縄県・尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返しているほか、フィリピンなどと領有権を争う南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島で大規模な埋め立て工事を進めている。

 国際ルールを無視した中国の行動は容認できない。米政府も強く警戒しており、シアー米国防次官補はガイドライン見直しによって、今後自衛隊の役割が拡大し、将来的に日米が南シナ海で共同で対応することに期待感を示した。米側には、中国の行動監視のため、南シナ海沿岸国への哨戒機や巡視船の提供を含めて、日本の関与が急務との認識がある。

 ロバート・トーマス米第7艦隊司令官も今年1月、インタビューで「率直に言って、南シナ海では中国の漁船、海警の船(と海軍の艦船)が近隣諸国を圧倒している」と述べ、「将来的に自衛隊が南シナ海で活動することは理にかなっている」と、日本の役割が広がることを歓迎している。

 東・南シナ海を内海化しようとする中国への対応が急がれている。特に南シナ海は埋蔵資源が豊富なだけでなく、世界有数の漁場であり、常に貨物が行き交う貿易ルート上の要衝でもある。シーレーン(海上交通路)を確保するために、日本の哨戒活動は有意義である。

 自民党の高村正彦副総裁は先月のワシントンでの講演で、政府・与党が整備を進める安全保障法制の意義を強調し、今国会を延長して関連法案の成立を目指す意向を示した。また、日米同盟強化が「日本と米国の国益であり、アジアと世界の利益だ」と強調し、「法制が整備された後、日本は地域の安定のためにより主体的に貢献できるようになる」と述べた。

 一方、中国の軍備増強と海洋進出については「懸念すべき動き」であり、「中国の軍事費は27年間で約40倍、ここ10年で約4倍になった」と指摘し、その上で「中国の動きがアジアのバランスを崩してしまうことのないよう、米国のリバランス(再均衡)を支える友人が必要だ」と訴えた。

 アジアの均衡を崩すな

 米国の世界的影響力が相対的に低下する現実がある一方、中国は軍事力を急速に拡大し、海洋活動を活発化させている。それは西太平洋地域の支配に向けられたものだ。

 日本の哨戒機能が南シナ海まで広がることは、単に同地域への関与を強め、自衛隊の役割拡大を果たすのみならず、同地域の均衡が崩れるのを防ぐことになる。

(4月1日付社説)